第18話 今度は一緒に



カレーも温め直し、ご飯の乗った器によそった。


思ったより、水っぽい。


しかし、香りは美味しそうなカレーの匂い。


二人分よそうとダイニングテーブルに置いた。


「「いただきます」」


二人は手を合わせて同時に言うと、茉白が結仁の方を見つめる。


「…どうした?」


茉白の視線に気づくと結仁の箸が止まる。


「お気になさらず!ささ、食べてくださいっ!あっでもスクランブルエッグの方が何故かしょっぱくなりすぎたので気をつけて、」


「…お、おう」


そう言うと結仁は先にスクランブルエッグを摘み、茉白に会釈すると食べた。


炒め方は上手で卵がふっくらとしていて柔らかく仕上がっていた。


しかし味は、塩気ばかりで塩辛かった。


(…っ!しょっぱ過ぎるっ!塩どんだけ入れたんだ…)


すると、茉白も箸で摘み食べた。


次第に顔がしかめっ面になる。

そんな茉白を笑っていると、


「…これは、上田くん。私が食べます…。さすがにしょっぱ過ぎて体壊しちゃいます…」


引きつった顔で結仁に言った。


「いやいや、俺が食べるよ。と言うか、味付けは?」


「醤油と砂糖の甘い味付けにしようと思ったんですけど、どんだけ砂糖入れても甘くならなくて…」


結仁は確信した。

茉白は塩と砂糖を間違えたのだ。


それは何回入れても塩辛くなる。


「…あぁ、塩と砂糖間違えたんだな、」


「…えっ?!いや絶対砂糖だったはず…!」


そう言うと立ち上がり、キッチンの調味料棚に向かう。


「いつもここにあるじゃないですか!」


塩と辛うじて読むことが出来るほどの薄文字で書かれたの入れ物を持って力説している。


(薄文字すぎて分からなかったか…)


「…すまん、それ薄文字で塩って書いてあるんだ」


「えっ、これ砂糖じゃっ…」


茉白は入れ物に書かれた薄文字を目を細めて睨んだ。


「し…お、?」


「それ、使い古し過ぎてだいぶ薄くなってたんだ…」


すると茉白の顔が赤く染め上がった。


「…すみません。間違えて…ました…。」


「いいよいいよ、分かりにくかったよな。すまん」


「……上田くんが謝ることじゃないですっ」


茉白は急にしゃがむと結仁からは見えなくなった。


結仁はそんな茉白を横目にカレーを頬張る。


少し水っぽいが味はしっかりとしたカレーだ。

野菜も肉もしっかり火が通っている。


「東雲!カレー、美味いぞ!」


結仁がそう言うと、茉白はキッチンから頭をひょこっと出した。


「本当ですか…?でも、だいぶ液体じゃないですか…」


「気にすんなよ!味、すごい良いから今度やるときは水分量測ってやってみようぜ」


茉白はダイニングテーブルに戻り椅子に座った。


結仁は茉白に微笑むと、茉白は目を逸らして不服そうな顔をした。


「ほら、自分の食べてみなよ」


「…分かりました」


するとスプーンを手に取り、カレーを掬って食べた。


「…食べれなくはないですね。でもやっぱり、上田くんの方が上手です…」


そう言って茉白は俯く。

俯いた茉白に結仁は、


「そんなこと無い。こんな美味しいもの作って待っててくれるなんて、すごい嬉しかったよ。ありがとうな」


そう言って茉白に笑うと、カレーをまた口に運び頬張る。


茉白は結仁を見て少し気持ちが明るくなった。


「…ありがとうございます」


「こちらこそだ」


すると茉白は目を横に逸らしながら恥ずかしそうに口を尖らせて言った。


「…あのっ、こ、今度はえっと、、」


「…?」


急に結仁と目を合わせた。


茉白の金眼は潤みながらも強い意志を持っているように感じた。


「い、一緒に作ってくれます…か…?」


「もちろんだよ。今度は俺が後ろで見といてやるから、」


結仁は茉白に笑いかける。


「一緒に作ろうな」


「…っ!はいっ!」


茉白は嬉しそうに言うと特別笑顔を見せた。


茉白に料理が作れる日は来るのだろうか。


結仁は茉白の嬉しそうな表情に優しい目で微笑んだ。


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