第13話 罰ゲーム



結局、格ゲーをすることになったのだが……


結果は結仁の惨敗だった。


志穏が1位。

涼が2位。


結仁は、3位。


当然といえば当然だが悔しいものは悔しいものだ。


「やり〜!私の勝ち〜!」


「結仁、なんか志穏強くなってね…?」


「…俺も思った…。」


「あれあれ〜結仁クンは格ゲーが得意なんじゃなかったっけ〜?」


「いや…、最近やってなかったし…」


「結仁〜それは負け犬の遠吠えですぞ〜!」


あまりしていなかったという言い訳も虚しく、志穏にいじり倒された。


「さ〜てさて〜?お待ちかね〜罰ゲームのコーナー!」


「やったね!」


志穏がコールするとそれに合わせるように涼が飛び跳ねた。


「さーてさてー?結仁には何を聞こうかー」


「気になることが多いからね〜」


二人は結仁をじーっと見つめる。

結仁は目を伏せながら呆れたように言った。


「はぁ…なんでもいいから早く聞けよ…」


「いやっ…もうちょっと考えさせて、」


「私ももうちょっとだけ…」


何をそんなに真剣になるのだろうか…。

聞くことなんてそれほど無いように思っていた。


しばらく時間が経ち、考えがまとまったのか最初に話し出したのは明るい笑顔で志穏だった。


「はいっ!私思いついた!」


「…なんだ?」


「あの時の東雲様の件!本当に偶然だったんですか?」


多分、結仁が熱中症で倒れている茉白を助けた、あの時のことだろう…。

結仁は、はぁと溜息をつくときっぱりと言った。


「だから、あれは偶然だって言ってるだろ?それにまだ覚えてたのかよ…」


「ほんとに偶然だったの〜…?」


「神に誓っても良い。あれは本当に偶然。」


「っちぇ〜…つまんないの〜」


志穏はそう言うと少し不貞腐れた。


「あ、じゃあさじゃあさ!」


志穏は何かを思いついたのか、また希望に満ちた顔をして言った。


「結仁は東雲様のこと、どう思ってるの〜?」


「…っは?!一人一問ずつじゃなかったのかよっ…」


結仁は嫌そうな顔をする。


「まあまあ!細かい事はいいからいいから〜!答えてっ!」


志穏はグイグイと結仁に詰めた。

こうなったら志穏は止められない。


結仁は仕方なく口を開いた。


「…別に、なんとも。容姿はいいから目の保養程度に思ってるよ」


「へぇ〜?ほんとにそれだけかな〜?」


すると志穏はニヤリと笑った。


「ほんとにそれだけ!…んで、涼は?」


志穏の話を切るように涼の質問を聞くことにした。


結仁は涼を見る。

すると、涼は気が抜けたような顔で結仁に質問をした。


「結仁って、東雲様に興味と言うか、好きっていう感情は持ってるのか?」


結仁の心臓は一瞬跳ね上がった。


(東雲に好意…?!)


涼の言葉にびっくりしながらも、少し整理すれば見えてくる事だった。


(…いやいや、東雲とはただのご近所付き合いみたいなものだから、そんな関係では無いし。そもそも俺と東雲とじゃ、見えてる世界が違う。)


涼に悟られないように顔を作りながら考え込むふりをして整理した。

すると涼が、


「なんだ、割と真剣に考えるじゃん」


「こういうのは真剣に考えて伝えないと、涼も志穏も面白くないだろ?」


結仁は平然とした顔つきで誤魔化した。

そして、


「…やっぱり、東雲さんのことは目の保養程度にしか見てないよ」


罰ゲームのルール的にはギリギリセーフの、あながち間違っていない事を言った。


嘘をついてもバレないのは承知の上だが、涼と志穏に嘘をつくのは結仁の気が引けた。


すると涼は残念そうに、


「まじかー、本当に気がないのかよ…」


結仁は納得していそうな涼にほっとした。

そんな中、志穏はまた不貞腐れていた。

期待していた答えが聞けなかったからだろう。


「でもさ、東雲様が好きとか興味無いとか関係なしに、結仁はもっとオシャレに敏感になった方がいいと思う。なっ、志穏!」


「それはそうだよ〜!」


「…?なんでだよ、気にしても余計大変になるだけだろ」


「そういう所だよ、結仁(笑)」


「もっと敏感にならないとね〜」


涼と志穏は結仁に近づくと、急にいつも下ろしている前髪を掻き分けた。


いつも前髪に隠れている綺麗な目元が現れる。

眉も目の形もシュッとしている。

元々艶のいい肌とマッチし、バランスのとれた顔立ちがハッキリ見えた。


「だってさ!こんなにカッコイイ顔立ちしてるのに勿体ねーよ!」


「ほんとほんと!いつも前髪で隠れてたし、目付きもキリッとしてるから怖いイメージ持ってる子多かったと思うよ〜!」


「…っちょ、なんだよっ」


結仁は涼と志穏の手を払い退けた。


二人は結仁の顔をマジマジと見つめた。


結仁は恥ずかしさを感じつつも、決して悪い気分ではなかった。


「…余計なお世話だっ」


結仁は恥ずかしそうに言った。


「あ、照れた!可愛いー!」


志穏がからかうように言った。

結仁はすかさず反論する。


「うるせー!ほ、ほら!勉強するぞ」


結仁はそう言い、教科書を手に取った。


その様子を二人はニヤニヤしながら見ていたが、やがて素直に勉強に戻った。


「よし、じゃあ続きやるか!」


涼の言葉に二人は元気よく返事する。


結仁も二人に釣られるように気合を入れ直した。

三人は再び問題集に取り掛かった。


そして集中して解いているうちに気づけば数時間経っていた。外はもう暗くなっている。


「さて、もうそろそろ帰ろうかな」


涼が時計を見て、帰り支度を始めた。


午後5時43分。


「私も帰らないと!」


志穏もつられて帰り支度を始める。


「また学校でな」


「バイバーイ!テストがんばろ〜!」


二人は笑顔で手を振る。


結仁はそんな二人に手を振り返した。

そしてそのまま玄関に向かう。

その後ろを志穏が慌てて追いかける。


二人を見送った後、家の片付けをし始めた。


(騒がしい奴らなこった…。)


結仁は心の中で思いつつ手を進める。


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