第12話 勉強会



今日は涼と志穏の三人で勉強会をする日だ。


場所は結仁の家。


「「お邪魔しまーす」」


玄関で靴を脱ぎながら、二人はそう言った。

俺は二人をリビングまで案内する。


リビングにはテーブルがあり、その周りにクッションが三つ置かれている。


三人はそれぞれ好きな場所に座った。


「さーて、まずは何する?」


涼はそう聞いてきた。

俺は少し考えてから答える。


「…まずは復習でいいんじゃないか?」


「おっけー」


結仁がそう言うと、涼は鞄から教科書とノートを取り出した。

志穏も同じく、鞄から勉強道具を出していた。


「よしっ、じゃあやろっか!」


涼の合図で、結仁たちは勉強を始めることにした。


結仁は英語の問題集を開いた。

まずは英文の和訳をすることにする。


今期のテスト範囲は中学でもやっていた範囲でまだ簡単である。


(今回は楽勝だな)


しばらく経ってから、結仁はふと顔を上げた。


「……」


「どうした、結仁?」


涼と目が合った。


志穏は黙々と問題を解いている。


「そのプリント、涼が自分で作ったのか?」


「そうだよ」


涼が持っているプリントには、授業で少し扱ったくらいの問題が書かれていた。


結仁ですらほとんど覚えていない内容だ。


しかし、そんな問題を涼はスラスラと解いている。


「……涼、頭良かったんだな」


「んー? まあねー?学年順位は30位くらいだし?」


涼は得意げに言った。


「マジか、俺なんて40位台だぞ、」


ふと志穏は顔を上げた。


「二人とも高すぎ…私なんて200人中120くらいだよ〜…」


結仁は驚き、志穏は少し不貞腐れて言った。


結仁は自分の順位を確認するだけで、順位なんて三人で競ったことがなかった。


結仁の内心、涼の順位を聞いて少し悔しいまである。


涼はただ遊びに更けるバカではなかったらしい。


「…涼、なんで今まで隠してたんだよ」


「ん? 別に隠してなかったけど?それに50位以内だから貼り出されてるし」


涼はそう言って首を傾げた。


「私だけ貼り出されてませんけどね〜」


志穏は嫌味っぽく言う。


「まあ、別に順位はそんなに気にしてないし!」


どうやら涼は本当に隠すつもりはなかったようだ。


まあ確かに、それほど大きな問題ではないのかもしれない。

結仁は気にしないことにした。


それからも俺たちは黙々と勉強を続けた。


志穏は途中で集中力が途切れたのか、スマホをいじり始めた。


涼はそんな志穏に声をかける。


「おーい、志穏さーん勉強進んでませんけどー」


「分かってるってば〜今いいとこだから邪魔しないで〜」


スマホを取ろうとする涼を軽くいなしながら、志穏はスマホをいじった。


「おぉ〜!きたきた!見て見て〜!」


志穏はそう言って結仁にスマホを見せた。


結仁は仕方なく志穏のスマホに目を向ける。


画面の中でSSRと書かれたキャラクターの派手な演出が流れている。


…どうやらゲームをやっているようだ。


「おぉ…って、サボるなよ」


そう言って結仁はスマホを掴んだ志穏の手を机に伏せさせた。


志穏は面倒くさそうにため息をついた。


「っちぇ〜、勉強つまんない〜」


そして渋々といった様子で勉強を再開する。


しばらくすると、涼が時計を見た。


「そろそろ休憩しない?」


午前9時に集合して、まだたったの2時間しか経っていない。


しかし、涼の提案に志穏は真っ先に賛成して、結仁たちは休憩することにした。


結仁はキッチンへ向かう。

そして棚から何かを取り出して戻ってきた。


「はいこれ。二人とも」


そう言って結仁が差し出したのは、チョコレート菓子だった。

二人はそれを受け取ると礼を言う。


そして一口食べたところで、ふと疑問に思ったのか、


「なんでわざわざチョコレート菓子なんだ?スナック菓子が出るのかと思った」


すると結仁は笑顔で答えた。


「悪ぃ、いつ買い込んだんだかチョコレート菓子が余分に余っててな」


そんな理由でチョコレート菓子を。

涼と志穏は少し呆れつつもそんな理由に笑った。


「後でポテチは持ってくるよ。まずは在庫処分」


結仁は笑顔で話した。


その後も結仁たちは雑談をしながらチョコレート菓子を食べ続けた。


しばらくして、志穏が口を開いた。


「ねー、なんか面白い話してよ」


「え?いきなりなんだよ」


すると志穏は当然のように言う。


「だって暇なんだもん」


そう言われてしまうと困る。


結仁はいつも通り適当に思いついたことを話そうとしたのだが、特に思いつかなかった。

なので結局何も言えずに終わることになった。


そんな結仁を見かねたのか涼が助け舟を出してくれた。


しきりに結仁のゲーム機を指差すと、


「じゃあさ、休憩なんだしあのテレビゲームでもしない?負けた人は罰ゲームってことで」


涼の提案に志穏は乗り気のようだった。


どうせ、パーティー系のゲームだろう。


結仁が得意なのは格ゲーだけ。


一時期中学でゲームに思いきりハマり、プロレベルにまでなったことがあった。


と言っても最近はゲーム自体しておらず、だいぶ鈍っている。


ミニゲームやちょっとしたパーティーゲームは持っているだけで、得意では無い。


そしてそれは涼も知っているはず。


涼はすぐに結仁に確認した。


「結仁って格ゲー得意な方だよな?」


「……まあな」


少し間を置いて答えた。


(どうせ、パーティーゲームで俺の事をボコボコに負け倒すんだろう…)


結仁がそう思っていると、今度は志穏が声をかけてきた。


「え、いいねいいね!やろうよ! 格ゲー!結仁の得意でやってやろうじゃないの〜!」


「…?志穏苦手じゃなかったっけ?」


「ふふん…私練習したんですぅ〜!あれあれまさか結仁クン、自信がないの〜?」


志穏は結仁に軽く煽りを入れた。


「はあ? んなわけねーだろ!そんな言うならやってやろーじゃねーか!」


結仁の負けん気が出る。


結仁はそう言うと結仁は腕を捲り、ゲームの電源を入れていた。

志穏の言葉につい反応してしまった。


それを聞いて、涼と志穏は顔を見合わせてニヤニヤしている。


しまったと思ったがもう遅い。


「罰ゲーム、何にしようか…」


涼が顎に手を当て考えていた。

すると志穏は、


「んー…、負けた人は他二人に一回ずつ質問されるってのはどう?質問された事は包み隠さず本当の事を言う…みたいなさ〜!」


「それいいね!みんなの恋愛話にも興味あるし…?」


涼は何かを企んでいるかのような笑みを浮かべる。


「じゃあ!それで決定〜!」


二人がニヤリと笑うのを見て、結仁はため息を吐く。

しかし仕方がないので結仁も参加することになった。


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