第154話
「すみません。遅くなりました」
別に全然遅刻ってわけでは無いけど、俺はそう言いながら待ち合わせ場所にミリアと小狐を連れ、既に俺たちを待っていたカノネの元へと向かった。
「いえいえ、私たちが早かっただけでラムさん達が遅かった訳ではありませんので、気にしないで大丈夫ですよ」
そんな俺の言葉にカノネがそう言ってくれている中、ミリアはまだ慣れないのか、俺の方にビックリしたような瞳を向けてきていた。
……さっき見たんだから、もう慣れろよ。
俺と小狐しかいない時ならいいけど、カノネに変に思われるだろ。
……つか、カノネって商人なんだよな? ……何か良いスキルを持ってたりすんのかね。
……いや、考えない方がいいか。
仮に良いスキルを持ってたんだとしても、流石に今カノネのことを殺すのはあれだと思うからな。
……まぁ、本当に俺が欲しいと思うようなスキルだったら、どんな状況であれ俺は奪うと思うけど。……基本的に殺して。
殺さないと、俺と接触した時を境にスキルが無くなったという事実だけが残ってしまうから、別に殺しが趣味って訳では無いんだけど、殺さないとダメだから。
「早速出発させようと思っているのですが、大丈夫ですか?」
「はい、もちろん大丈夫ですよ」
「では、よろしくお願いしますね」
カノネは俺と恐らくギルド側から用意された人間に頭を下げてそう言い、用意されていた馬車に乗り込んでいった。
そして、ゆっくりとカノネが乗り込んだ馬車を含め、待機していた馬車が三台程出発した。
……流石に護衛をする立場の俺たちは乗っちゃダメだよな。
馬車のスピードも歩きでついていけるくらいのスピードだし、歩くか。
……つか、こういうのって前と後ろとかで別れて守るものなんじゃないのか?
そう思い、俺はミリアと小狐の方を見たのだが……小狐はともかく、ミリアが戦力にならないことを思い出した。
……街中でとかならまだともかく、襲われる可能性がある外なのに、ミリアと小狐を二人っきりにさせるのはな。……小狐に戦闘能力があることは分かってるけど、明らかな足手まといがいる状況ではな。
小狐はミリアのことを気に入っているし、俺とは違って自分の命が危険になったとしても守ろうとすると思うから、二人っきりにさせるのはダメだな。
……俺が小狐と一緒にゼツと戦った時、こいつは自分の命だって危ないって言うのに、俺を助けようとゼツと戦ってたからな。多分、ミリアがピンチになったりした時も同じような感じになるだろうしな。
小狐を一人にするなんてのは論外だし、このままでいいか。
何だかんだ小狐は強いし、大丈夫だとは思うけど、万が一があったら困る……というか、終わるからな。本当の意味で。……昔は平気で小狐を戦力として戦わせられてたんだけどな。
あの存在……親狐の存在を知ってしまった瞬間から、そんなことは不可能になってしまった。
……いや、小狐が望むのなら、その要望には出来る限り応えるつもりではあるけどさ。……やっぱり、怖いだろ。
「…………いや、なんでお前、一緒にいるんだよ」
そこまで考えたところで、俺は思った。
よくよく考えて見たら、ミリアは確かに戦闘要員では無いけど、索敵要員ではあるだろう、と。
馬車よりも先に先行して、害になるものが居ないか見てこいよ。
「え?」
「え? じゃねぇよ。索敵はお前の仕事だろ。安全なのか安全じゃないのか、先に行って見て来いよ」
「あっ、う、うん。わかったわ!」
……俺はともかく、何で自分のことなのにミリアが気がついていないんだよ。
そんなことを思いながら、俺は離れていくミリアの背中を見送った。
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