第153話
「失礼します」
言われた部屋で少しの間待っていると、扉がノックされ、ミリアが返事をすると同時にそんな声がして、部屋の中にギルドの人間らしき職員が一人と豪華そうな装飾品を付けた人当たりが良さそうな見た目をした40か50歳くらいの歳の男が一緒に部屋に入ってきた。
「こちらの方があなた方に護衛をしていただくカノーネ商会のカノネさんです」
カノーネって……随分な……いや、この世界では別に普通の名前だったりするのか?
……まぁ、別になんでもいいか。
「初めまして、カノネさん。このパーティーのリーダーをさせて頂いていますラムです」
そんなくだらないことを内心で考え、俺は人のいい笑みを浮かべてそう言った。ここからは流石にミリアに任せるって訳にはいかないと思うし。……一応、俺がパーティーリーダーだからな。
すると、心做しか横目に見えるミリアの俺を見る目が凄くビックリしたような目になった気がしたが……今思うと、ミリアの前でこんな顔をしたのは何だかんだ初めてだったか? 仮にそうなら、そんな表情にもなる……のかね。
いや、でもまぁ、笑顔くらいはミリアにも向けたことがある……あるよな? いや、あるな。ミリアが泣きそうな時とか、俺はちゃんとミリアに笑顔を向けていたはずだ。……多分。あんまり覚えてないから、何とも言えないけど。
「これはご丁寧に、私は紹介にあった通り、カノネと申します。近くの街……ムントまでですが、私どもの護衛を是非よろしくお願いします」
カノネも俺に負けず劣らずの人のいい笑みを浮かべてそう言ってきた。
ムントってのがどっかの街の名前ってことでいいのかね。
「今回の依頼はランクアップ試練です。万が一の為に備え、ギルド側から何人か人をつけさせて頂きますが、ギルド側の人間が守るのはあくまでカノーネ商会の皆様ですので、そこのところはご理解の程をお願いします」
そんなことを思っていると、カノネと隣に座っているギルドの職員が営業スマイルのままそう言ってきた。
「分かりました」
そんな職員に俺は素直に頷いた。
俺たちの……ランクの低い冒険者の試練の為に商会の人間を危険に晒すのは普通にどうかと思うし、職員の言ってきたことは全然納得出来ることだったからな。……人間のことをなんとも思っていない俺が言うなよって話かもしれないけど。
「では、今から一刻後、王都の門のところで集合ということで構いませんか?」
「はい、構いません」
「私たちも、それで構いません」
そんな感じで、俺たちは一旦解散となった。
「あ、あんたってあんな話し方も出来たのね」
「そりゃな。それより、護衛依頼に何か絶対に必要なものとかって分かるか? 分かるのなら、さっさと買いに行こう」
俺のさっきの様子に驚いているミリアの言葉に適当に返事をして、俺はそう言った。
「……私も、あんまり分かんないわよ」
「……使えないな」
「あ、あんたも分かんないんだから、人のこと言えないじゃない!」
まぁそうだけどさ。
……まぁいい。適当に念の為保存食でも買っておけば大丈夫だろ。
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