第150話

「で、その試練っていうのは今受ければいいのか?」


「ギルド側が用意してくれるみたいよ。明日またギルドに来てくれって言われたわ」


 ……今日は受けられないのかよ。

 本当に面倒臭い仕組みだな。


「そうか。……まぁいい。なら、今日はまた自由行動ってことでいいな?」


 俺にもたれかかってきている小狐を自分で立たせるようにしてから、俺はそう言いつつ、ギルドを出ようとしたのだが、ミリア……だけじゃなく、小狐にも止められた。……何故か腕を掴むとかそういうのじゃなく、体ごと抱きついてくるという形で。

 ……小狐はまぁいいとして、なんでミリアまでそんな止め方なんだよ。

 ミリアに口で言われたからって俺は止まらなかったと思うから、強引に止めてくること自体はまだいい。

 ただ、腕を掴むなり、手を掴むなりでいいだろう。

 どこに体ごと俺に抱きついてくる要素があったんだよ。

 ……いや、確かに、こんな止められ方をしたら、足を止めざるを得ないけどさ。

 ……それを狙ったって感じでは無い、よなぁ。……ミリアだし。


「なんだよ」


「な、なんだよじゃないわよ! あ、あんた、何また勝手にどこ何行こうとしてるのよ!」


「今日は依頼を受けられないって話だろ? なら、別にいいだろ」


 小狐にも止められてしまったから、少なくとも今日はこいつらから離れることは出来ないだろうな、と思いつつも、俺はミリアに対してそう言った。

 

「い、いいわけないでしょ! あ、朝の約束があるでしょ!」


 朝の約束……? あぁ、そういえば、ミリアにどこかに付き合ってくれって言われて、頷いたんだったな。

 ……どうしよう。本当にシンプルにどうでもよすぎて忘れてたな。

 ……いや、案外指を咥えられながら舐められたことのインパクトが強すぎたからだったり……しないか。それなら昨日だってやられてるしな。


「あー、そうだったな。ほら、よしよし。なら、さっさとミリアの行きたいところに行くぞ」


 ミリアの頭を撫でながら、適当にそう言った。

 まぁ、どうせ本当に一人になれるとは思ってなかったからな。


「ほ、本当に忘れてたの!? ……こ、こんなちょっと頭を撫でられたくらいで……くらいで……んぅ……は、早く行くわよ……」


 そして、相変わらずミリアはちょろかった。

 そんな中、小狐がミリアを羨ましそうな目で見ていることに気がついてしまった俺は、そのまま小狐の頭も撫でてやった。

 ミリアの方とは違って、こっちは耳の触り心地がいいから、俺にも得があっていいな。




 ギルドを出た後、ミリアの後ろを着いていく形で俺と小狐は歩いていた。


「どこに行くんだ?」


 そんな中、俺はそう聞いた。

 未だに目的地は教えられていなかったから。


「着いてからのお楽しみよ」


 少し照れた様子を見せながら、ミリアはそう言ってきた。

 ……なんでそんな様子を見せるのかは知らないが、到底俺が楽しめるところとは思えなかった。

 最初から期待してないし、別にどんな場所でもいいんだけどな。

 どんな場所でも、多少の暇つぶし程度にはなるだろうし。




「こ、ここよ」


 そんなことを思いつつ、案内された場所は、何故か街中だというのに切り倒されていない一本の木が生えた場所だった。

 ピンクの葉が生えた木……俺の知識的に言うなら、桜の木に一番近いんだろうけど……これがなんだって言うんだ?

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