第148話
朝になった。
……取り敢えず、小狐が起きる前にミリアを起こそうと思うのだが、こいつ、ほんとに昨日言ってたようなことをするつもりなのかね。
まぁ、もう別にどっちでもいいけど。
「ミリア、起きろ」
そんなことを思いつつ、俺はミリアに抱きつかれている腕を引き抜き、ミリアの体を小狐の方に振動がなるべく行かないように揺らした。
「ん……」
こいつが早く起きてくれないと、小狐が襲われる可能性を考えて、ずっとミリアのことを気にしてなくちゃならないから、早く起きてくれないかな。
「おい、早く起きろ、ミリア」
「ん……ラムぅ……好きぃ……」
そう思いつつミリアの体を揺すり続けていると、ミリアの目が開いた。……かと思うと、寝ぼけた顔でそんなことを言って、ミリアは俺の腕を掴んできた。
……この感じ、こいつ、本当に俺の指を咥えて舐めるつもりなのか。
仮にこいつと二人っきりになる時があったら、あっちの方も咥えようとしたりするのかね。……どうでもいいか。昨日の小狐の感じからしても、ありえない事だし。
……全く、俺は一体何を考えてるんだ。……馬鹿馬鹿しいしくだらないにも程がある。
そんなことを考えているうちにも、俺の指はミリアの口に咥えられ、舐められていた。……手首のところを両手で持って、口の中に固定するようにしながら。
「……今日もちゃんと理性があるんだな」
ある意味で理性が無いとも言えるけど、ミリアの瞳には明らかに理性の色が……いや、無いとは言わないけど、それと共にちょっとだけ発情というか、そういう感じの色があるな。
「ひゃむぅ……」
ミリアは俺の言葉に上目遣いになりながら、多分俺の名前を呼んできつつ、指を舐めることを止める様子は無かった。
……ひゃむなんて名前を名乗った覚えは無いんだけど、もういいか。
そう思いつつ、俺は諦めたような気持ちでミリアの頭を撫でてやった。
アホの子すぎて可愛く見えてきたからな。
昨日変身スキルを奪ったあの子供……カロン、だっか? そいつには全くこんな感情を抱くことは無かったんだが、あいつとミリアで何が違うんだろうな。
やっぱり、一緒にいる時間か? 小狐のせいで俺の方からは離れられない関係っていうのも大きいんだろうな。
「ひゃむぅ、すひぃ……」
……この前まではどっちかっていうとツンデレって感じだったのに、仮とはいえ付き合った影響なのか、随分と素直に好きだと伝えてくるようになったな。
……まぁ、やっぱりどうしても信じられてない部分はあるけどな。
「かゃんでいひ?」
噛んでいい? ってところか?
……多分、合ってるんだろうな。なんで理解出来ちゃったかな。……いや、分からないよりはいいのか。
「好きにしろ」
別に痛み耐性のスキルとゼツに全身を焼かれた経験のおかげで指を噛まれるくらいじゃ痛みなんて全く感じ無いし、俺は適当にそう言い放った。
すると、ミリアには遠慮というものが無いのか、指に噛み付いてきた。かと思うと、そのまま出てきた血をゆっくりと優しく? 舌で舐めてきやがった。
……やっぱり、こいつは特殊性癖の持ち主なんだろうな。
……いや、この状況に俺も確かな興奮を覚えてしまっているし、人のことは言えないのか。
「はぁ……ミリア、小狐が起きたら、今日は依頼を受けに行くってことでいいんだよな?」
溜息をつきつつ、そう聞くと、ミリアはそのままの状態で頷いてきた。
「今更なんだけどさ、お前、王都に行きたい理由は風呂だけじゃないって言ってたよな? それはいいのか?」
「──ッ……つひあって、くれゆ?」
………………どうせ今日は暇だし、別にいいけどさ、それはせめて指を離してから言わないか?
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