第123話

「これ、死体ごと持っていったらいいんだよな?」


 ミリアと小狐の元に戻った俺は、開口一番にそう聞いた。

 戻る途中、もちろん黄金うさぎに向かって強奪スキルは発動させている。

 その結果、俊敏スキルのレベルが2から4に上がった。

 普通に有能なスキルのレベルが上がったから、結構今の俺は気分が良かったりする。


「う、うん。そうだけど、怪我とか、無い? 大丈夫?」


 首を無理やり潰したから、血がポタポタと俺の腕を伝って地面に落ちている様子を見ながら、ミリアは心配そうに聞いてきた。

 ……うさぎの心配をしているように見えるけど、そんな訳ないよな。

 いくらなんでも、俺の心配だよな。


「大丈夫だよ」


 いつもなら「見たら分かるだろ」とか言ってたかもしれないけど、今の俺は気分がいいからな。


「キュー……」


 小狐も心配して……いや、違うな。こいつ、この黄金うさぎを食べようとしてやがる。


「ダメだぞ? これは食べちゃダメなやつだからな? ……これをギルドに持っていったら、金が手に入るし、後で美味いものを食わせてやるから、本当にやめろよ?」


「キュー!」


 良かった、納得してくれたな。

 ……美味しいものを食べさせなくちゃならなくなったけど、まぁ、大丈夫だろ。

 小狐が不味いと思うものなんて想像もつかないし。

 こいつ、なんでも食うからな、マジで。

 

「ミリア、美味い飯屋とか知ってるか?」


 そう思いつつも、万が一って可能性はあるし、俺はミリアにそう聞いた。

 

「王都なんだから、数え切れないほどあると思うわよよ? 後で一緒に探せばいいわ」


「なら、頼むよ」


「う、うん」


 ミリアが自分から申し出てくれたんだから、ミリアに任せればいいかと思い、俺はそう言った。

 まぁ、今は気分がいいし、本当に一緒に探しすのでもいいんだけど……どっちでもいいな。




「受け取ってきたわよ!」


 そして、ギルドに戻ってきた俺はミリアにもう血が垂れてこなくなった黄金うさぎを渡し、依頼達成の報告をしてきてもらっていた。

 相変わらずミリアは犬みたいにして、貰ってきた俺に報酬の金貨二枚を渡してくれた。

 ……ダメだ。こいつ、マジで可愛い。


「よしよし」


 首を横に振ってから、ミリアの頭の上に二回ほど手を置き、俺は小狐を連れてギルドを後にした。

 もちろん、その後ろにはミリアも物足りなそうな顔をして着いてきている。


「ほら、これがミリアの分な」


「……金貨一枚? 多くない?」


 まぁ、多いだろうな。ギルドからの報酬は金貨二枚だったんだから。

 

「これから食う飯の金を払ってくれたら、ちょうどいい感じになるだろ。……多分」


 そもそも金貨二枚は三人で分けきれないし、これに関しては仕方ないことだ。

 と言うか、報酬を三人で分けるってこと自体が俺はおかしいと思うけどな。

 だって、小狐に関しては本当に着いてきただけで何もしてないんだから。

 まぁ、文句なんて言えるはずもないし、何も言わないけどさ。


「あ、そういうことね。分かったわ」


 こいつはこいつで単純で助かるな。

 普通に考えたら、俺が一番得することになるし、文句くらい言ってもいいはずなんだがな。

 

「なら、早速どこか飯屋を​──」


 飯屋を探そう。

 そう言おうとした俺の言葉は、目の前を通って行く騎士達のせいで遮られることとなった。

 別に騎士達に何かを話しかけられた訳では無い。

 ただ、なんて言えばいいんだろうな? まるで何か事件でもあったかのような感じの迫力に思わず黙ってしまったんだよ。

 俺があの街でギルドを潰した直後とかはこんな感じであの街の騎士達も動き回ってたのかな。


「昨日から思ってたことだけど、何かあったのかしら」


「別に俺たちが気にするような事じゃないだろ」


 仮に俺たちの……魔物の侵入がバレてたんだとしたら、俺たちを無視してどこかへ行く理由が分からないし、俺達には関係ないことなんだろう。

 そもそも、あの騎士達は王都のどこにいても見えるくらいに大きな城の方に向かっていってるし、王族が絡んでいる可能性すらある。

 余計なことは考えないに越したことはないな。

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