第122話

「黄金うさぎ、見つけてきたわよ!」


 あれから結構な時間が経ち、やっとミリアが戻ってきたかと思うと、元気よくそう言ってきた。

 ……見つけてきてくれたのはいいんだけど、うさぎってくらいだし移動速度が早そうなんだが、大丈夫か? ミリアが見つけたという場所に着く頃にはもう居なかったりするんじゃないのか?


「よしよし、よく見つけてきてくれたな。偉いぞ」


 そう思いつつも、黄金うさぎを見つけて帰ってきてくれたら頭を撫でてやるって決めてたし、俺はミリアの頭を撫でてやった。

 

「き、急に何よ……さ、さっきは……ん……やめなさいよ」


 言葉とは裏腹に、全くミリアは抵抗する様子を見せてくることは無かった。

 ……こいうい所も可愛いと思えてしまっている俺はやっぱりヤバいのではないのだろうか。

 ……これじゃあまるで、俺が本当にミリアのことを好きみたいじゃないか。……俺は魔物だぞ? そんなの、弱点にしかならないだろ。……ただでさえ強制的に小狐が俺の弱点になってしまっているのに、ミリアまで弱点になるなんて、ダメに決まってるだろ。


「……早く黄金うさぎの所に連れて行ってくれ」


 そう思い、俺はつい先程まで頭を撫でていたとは思えないような冷たい声色でそう言った。


「……ぇ? ぁ、うん。……こっちよ」


 少し心が痛んだ気がしたが、その心はとっくの前に捨ててるし、勘違いだ。

 そう言い聞かせ、俺は小狐と一緒にミリアの後を追った。

 

「……あそこよ」


 声を小さくして、黄金うさぎにバレないようにミリアは言ってきた。

 ミリアの視線の先を追う。

 ……黄金だ。……本当に名前の通り、黄金のうさぎだ。……え? あれさ、普通にギルドに渡すよりどっか違うところに売った方が金になるんじゃないのか?

 

「……ラム、一応言っておくけど、あれ、全部メッキだからね?」


 あ、そうなのか。

 なら、普通にギルドに渡した方がいい……のか?

 まぁいい。俺はさっさとあれを討伐しよう。こんなこと思っているうちに逃げられる方が厄介だしな。

 

「お前らはここにいろよ」


「う、うん。気をつけてね」


「キュー」


 ミリアが居なかったら、この距離から超音波で一発なんだけどな。

 ミリアの前であんまり手の内を晒す気は無いし、さっさと普通に終わらせよう。

 ……まぁ、正直に言うと、もうミリアの前でスキルを隠す必要なんてないんじゃないか? と思い始めてしまっているけど、俺のスキルは基本的に魔物から奪ったものだし、人間が覚えられないようなスキルの可能性があるから、やっぱりなるべく見せない方がいいはずだ。俺、まだミリアに人間じゃないってことを伝えてないし。


 そして、相手はうさぎだし、レベルのおかげで上がっている身体能力を生かして首根っこを掴み、ちゃんと捕まえてから殺そうと思ったんだが、普通に体を逸らされて俺の手は空振りすることになった。


「……」


 うさぎが森の奥に逃げて行ってる。

 ……スキルを見せたくは無いけど、このまま逃がすのは頑張って見つけてきてくれたであろうミリアに悪いか。


(俊敏)


 俊敏スキルなら俺の身体能力だって誤魔化しも……いや、これに関しては正直にスキルだって言った方がいいか。

 普通の人間がスキルとかを使わずにこのスピードで動ける方が不自然だわ。

 ……俺は人間の上澄みを知らんし、なんとも言えないけど。


「ぐぎゃ」


 そんなことを思いつつ、俺に首根っこを掴まれ暴れている黄金うさぎの首を握り潰すために力を入れた。

 すると、ミリアが言っていた通りこの黄金部分はメッキだったのか、首にヒビが入ったかと思うと、そのまま首が潰れて、うさぎは絶命した。


 帰るか。

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