第120話
宿に出してもらった朝食を食べ終わった。
「美味かったか?」
「うん!」
「なら良かった」
小狐とそんなやり取りをしつつ、俺はミリアの方に視線を向けた。
すると、ミリアの方も俺の方を見てきていたようで、目が合った……かと思うと、ミリアは顔を真っ赤にして、俺から目を逸らしてきた。
……かなりおかしくなってたからではあるんだけど、俺があの時何を言おうとしてたか分かってる反応だよな。
……と言うか、今更だけど、こいつ、俺に多分キスをしてきたであろう時、好きとか言ってた、よな。
……ミリアが俺を好きになるなんて意味が分からないし、違うと分かってるんだが、こんな反応を見せられたら勘違いしてしまいそうになる。
あくまにしそうになるってだけでしないけどさ。
「?」
俺たちの様子を見た小狐が首を傾げて不思議そうにしている。
「なんでもないよ」
喧嘩をしていると勘違いされても困るし、俺はすぐにそう言った。
はぁ。もう気にしないようにしよう。俺が気にしなければ、ミリアの方も忘れていってくれるだろ。
そして、昨日話していた通り、冒険者ギルドに俺たちはやってきた。
金を稼がないとだからな。
良い依頼があったらいいんだが、その辺はミリアに任せよう。
そういう話でこいつはパーティーメンバーになったんだし。
……小狐が気に入らなきゃあの時は絶対入れて無かったけど。
「じゃ、頼んだそ」
「え? あ、う、うん。分かったわ!」
俺の言葉に一瞬困惑して様子を見せていたけど、直ぐに何かに納得したような顔をして依頼の紙が貼ってある場所にミリアは向かっていった。
自分の役目を忘れてたのか? まぁいいけどさ。ちゃんと直ぐに依頼を取りに向かっていってくれたし。
「取ってきたわよ! これなら、私たちのランクでも受けられるし、報酬も悪くない方だから、後はラムが大丈夫かどうかよ。もし無理そうなら、直ぐに別の依頼を持ってくるわ!」
いつも通り……と言うほどまだ何回もこのやり取りをしてる訳じゃないけど、相変わらず犬みたいにミリアは依頼の紙を持ってきてくれた。
そこまではいい。
ただ、俺がキスの件でミリアのことをほんの少し……そう、本当に少しだけ意識してしまっているからなのかは分からないが、ミリアが頭を撫でられることを期待している……ような気がする。
……確かに、いつもこういう時、犬みたいになるミリアの頭を思わず撫でていたけど、今日は撫でたりなんかしないぞ?
……まぁ、ちょっとだけ撫でそうになったことは否定しないけど、ただでさえ俺は悔しいことにミリアのことを本当に少しだけではあるけど、意識してしまっているんだ。
いつもみたいに何も思っていない時ならともかく、今日はしねぇよ。
全部勘違いの可能性もあるから、特に何も言わずにそのままミリアから依頼の紙を受け取った俺は、その内容を確認した。
……黄金うさぎの討伐?
黄金うさぎっていうのが何かは全く知らないけど、それを討伐するだけで金貨が二枚も貰えるのか?
それだけ強い魔物なのか、ただ単純に討伐しにくい魔物なのか……まぁ、受けない選択肢は無いな。
ミリアがこれを持ってきたってことは、自称索敵が得意なミリアが探してきてくれるんだろう。
「依頼、受けてきてくれるか?」
「あ、う、うん。分かったわ……」
何故か残念そうに頷くミリアを無視して、早いところ受付に行ってもらい、受付に依頼を持って行くミリアを見守った。
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