第101話
テントを張って、適当に集めた木の枝だったりでおこした火を囲みつつ、味気ない夕食の時間が終わった。
案の定と言うべきか、小狐は物足りなそうだった。
ここは一応街道から外れてるし、人が来る可能性も少ないだろうから、適当に小狐が食べれるであろう魔物(こいつはほぼなんでも食べるけど)を探してこようかと思ったのだが、何故か小狐自信に止められた。
我慢するみたいだ。
まぁ、俺としてはそっちの方が楽だから、それで良かったんだけど、本当に大丈夫か? ……いや、大丈夫なんだろう。そう信じるしかない。
「もう寝るか? 寝るのなら、元の姿に戻っていいからな」
うとうととしてきている小狐に向かって、俺はそう言った。
どうせ起きてたってやることなんてないし、空腹を紛らわすためにも寝た方がいいとも思うし、出来れば寝て欲しい。
テントの中なら、人化を解除しても俺たち以外に見られることなんてないからな。
……俺はミリアにスライムだってことを隠してるから、絶対解除出来ないけど。
そもそも、ミリアに付き合って夜の番をするつもりだから、テントの中に入るとしても、それはかなり後だろうから、関係ないか。
……と言うか、今更なんだけど、俺はスライムになる前が人間だったから全然違和感なんてないから問題なんだけど、小狐はどうなんだろうな?
人化している時、何か違和感だったりがあったりするのだろうか。
人化してる時に小狐が何かの力……スキル? を使ったりした時、ボンッて感じに煙を出して人化が解除されたりするし、やっぱり違和感はあるのか?
そう考えると、俺は人化した状態でスキルを使ったりしても全く負担になんてならないし……ゼツから奪ったスキルだから、小狐の人化のスキルより上位のスキルだったりするのかな。
「キュー」
そうして、色々と考えていると、俺の膝の上まで移動してきた小狐がそのまま人化を解いて、膝の上に丸まり、目を閉じていた。
……いや、テントで寝ろよ。
めんどくさいけど、俺が運んでやるか。
そう思い、テントの中の毛布を上手いこと小狐にくるまらせて、俺はテントを出た。
ちょっとだけ小狐が一人……一匹で寝るのを嫌がる可能性も考えてたんだけど、流石にその辺は自立できてたみたいで何も言われなかった。
そして、火のところに戻ると、ミリアが毛布にくるまって俺を待っていた。
……お前、アンデッドなんだから、別に寒くなんてないだろ。
実際、俺はスライムだから寒くないし。
「思ったんだけどさ」
そんなことを思いつつ、火を挟んでミリアの対面に座り、俺は口を開いた。
「何よ?」
「いや、ミリア一人で夜の番をしてたとして、なにか魔物が出た時、どうするつもりだったんだ? お前、戦えないだろ」
「…………も、もっと楽しい話しない?」
考えてなかったんだな。
まぁいいけど、楽しい話ってなんの話しをするんだよ。
俺とミリアの間に共通の話題なんて無いだろ。
……いや、一応、元人間だってところが共通点ではあるか?
「と、取り敢えず、そっち、行っていい?」
「ダメだろ」
「な、なんでよ!」
「逆になんでいいと思ったんだよ」
そもそも、急すぎるだろ。
話の話題を変えるって話だっただろ。……いや、一応変わりはしたのか。
「さ、寒いでしょ? だから、この毛布一緒に使おうって言ってるのよ」
……別に寒くないし、なんなら、お前が毛布を俺に渡してくれたらいいだけの話だろ。
アンデッドなんだから、ミリアも別に寒くなんてないだろうし。
それにさ、俺は何回かミリアに抱きつかれたりしてるけど、その度に結構ドキドキしてるんだよ。
ミリアのことを異性として意識している……とかでは全くなく、俺に心臓が無いことに気が付かれないかだ。
「遠慮しとく。少なくとも、今のところ大丈夫だし、リュックの中に俺の分の毛布があるだろ。俺が必要だと感じたら、そっちを渡してくれればいい」
そうなんだよ。
俺の分の毛布も別にちゃんとあるんだよ。だからこそ、尚更ミリアと一緒に毛布を使う理由なんて無いんだ。
……それなのに、なんでミリアがそんな提案をしてきたんだ? って疑問はあるけど、まぁ、別にいいか。
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