第99話
「そろそろ一旦休むか?」
アンデッドであるミリアに休憩が必要なのかは置いておいて、小狐は休憩が必要だろうから、俺はそう聞いた。
多分、もう昼くらいにはなってるだろうからな。
「そうね。私はともかく、あんたとその子は休憩が必要よね」
本当は俺も必要ないんだけど、俺は特に余計なことは何も言わずに頷いておいた。
ミリアに本当のことを教える必要なんてないしな。
そして、俺たちは木陰に移動した。
別に俺は必要無いんだけど、ミリアが持っていた荷物の中から水を小狐と一緒に貰って、飲んだ。
それと同時に、食料も渡してもらった。
……パンの方はいいんだけど、干し肉か。
小狐の為に、適当な魔物でも探してくるか? 多分、足りないだろ。
さっきのオークを持って来れたら良かったんだけど、あんな大きい体の魔物なんて運べないしな。
……今思えば、魔石だけでも取っとくべきだっかね? いや、誰か人が来たら事情とかを聞かれるかもだし、あれはさっさと逃げて……と言うか、離れておいて正解だったな。
「小狐、俺のも食っていいぞ」
ここは街道から近いし、今は居ないけど、人が通る可能性がある。
仮に俺が適当な魔物を狩って持ってきたとしても、それを生で食べている小狐の姿が見られる可能性がある以上、やめておいた方がいいだろうと思い、小狐に向かって俺はそう言った。
これが美味い飯だった場合は躊躇っただろうけど、別に特別美味しい訳でもないただの保存食だし、特に躊躇うことなく、だ。
「キュー!」
すると、口にパンと干し肉を含んだまま、嬉しそうに小狐は鳴き声を上げてきた。
これでも全然足りないだろうけど、まぁ、無いよりはマシだろ。
「ち、ちょっと、あんたは大丈夫なの? その子がまだ食べたいなら、私のをあげるわよ? ……その、私、食べなくても生きていけるからさ」
ならなんで自分の分まで食料を買ってるんだよ、って思うけど、俺も人のこと言えないか。
……一応、俺はミリアに隠してるからって理由があるけどさ。
「別に要らねぇよ。そんなに腹減ってねぇし。気持ちだけ受け取っておくよ、ありがとな」
「…………ほんとに大丈夫なの? 無理してない?」
「してないよ」
むしろ俺は小狐の方が心配だよ。
昼は大丈夫でも、夜はいくらミリアでも食べないと怪しんでくるだろうし、食べるつもりだからな。小狐に分けてやれないし、機嫌を悪くしなければいいんだけどな。
……まぁ、今までの感じからして小狐がそれくらいの事で機嫌が悪くなるとは思えないし、そこは大丈夫だと思うんだけど、それより、やっぱり親狐の存在が心配だな。…………大丈夫、だよな?
そんなことを思っていると、小狐が食べ終わったみたいだから、俺たちはまた進み出した。
ミリアが言うには、この先に川があるらしいから、今日はそこでテントを張って野宿にするらしい。
そんなところで野宿なんて、水を求めた魔物が寄ってくるんじゃないか? と思ったんだが、そこら辺は大丈夫らしい。
腹の立つドヤ顔を俺に向けて自信満々に言ってきたくらいなんだから、大丈夫なんだろう。
これでもしも大丈夫じゃなかったら、色んな意味で恥ずかしすぎるからな。
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