第83話
小狐を抱き抱えつつ、ベッドで寝転びながら時間加速スキルを使っていると、直ぐに時間が経って、窓から太陽の光が差し込んでくるようになった。
このスキル、楽でいいな。
夜の間、色々とこれからのこととかを考えるのも悪くは無いけど、やっぱり、暇だもんな。
そう思いつつ、小狐を起こさないように離しながら、俺はベッドから起き上がった。
そしてそのまま、窓から外を覗く。
仕事に向かっているのか、朝早くから外に出ている早起きな人間がチラホラと歩いているのが見えるけど、その様子に昨日ギルドが突然襲撃されて焦っている……と言うか、怯えている? ような様子は見られなかった。
……まだ昨日の夜の出来事だから、情報が出回っていないのか、ただ単純に自分には関係ない事だからと割り切っているのか。
流石にこの場合は前者かな。
俺的にはギルドを襲撃した理由なんて明白なんだけど、他の奴らからしたらなんでギルドが襲撃されたのかなんて分かるわけがないし、次は自分のところなんじゃないのか? と怯えていてもおかしくないはずなんだ。
それを考えると、やっぱりまだギルドが謎の襲撃を受けたという情報は出回っていないんだろう。
まだそこまで理解出来ているわけじゃないけど、こんな世界だし、スマホやSNSのような情報伝達技術なんて無い……って考えるのは危険か。
今外に歩いているような奴らはともかくとして、権力のある人間はそういう道具を持っていると考えておくか。
そう考えておいて損は無いと思うしな。
「キュー……」
そうして、窓から外を眺めつつそんなことを思っていると、後ろから小狐のそんな鳴き声が聞こえてきた。
目が覚めたのかと思い後ろを振り返る。
「おはよう、小狐」
すると、まだ眠たそうにしつつも小狐が目を覚ましていたから、これから二度寝をするにしろ、俺はそう言った。
「キュー!」
寝起きの癖に小狐はベッドから俺の胸に向かって飛び込んできた。
突然の事でびっくりしたけど、当然俺は小狐のことを絶対に落とさないように受け止めた。
「キュー♪」
「はいはい。……それで、どうするんだ? 二度寝でもするか? 俺はミリアを起こしに行ってくるけど」
もう起きてる可能性もあるけど、小狐が気に入ってるミリアに俺がギルドを潰した犯人だと疑われるのは色々な意味で面倒だからな。
一応、無いとは思うけど、ミリア以外にも俺が犯人だと疑われることも考えて、どこかでボロが出ないようにギルドが潰されたってことをミリアに怪しまれないように知っておいた方がいいと思うし、ミリアを起こして、朝からパーティーメンバーと一緒にギルドに依頼を受けに行ったら、ギルドが潰れていることを初めて知った、という感じでいこう。
これなら、もしも外に出た時に兵士か騎士か、どっちでもいいけど、そのどっちかに事情聴取とかをされたとしてもボロなんて出ないはずだ。
昨日の夜のことはお互い部屋に戻って寝たと言えばいいだけだしな。
ミリアの方はともかくとして、俺には一応小狐という証人だっているんだ。怪しまれることなんて無いはずだ。
……背格好だってちゃんと昨日は猫背にして誤魔化してたし、あの状況でそこまで確認して俺が昨日の人物と同一人物だと分かるやつなんているわけが無い。
だから、仮にバレたとしたら、それはもう俺のせいじゃなく、誰かのスキルによるものか、俺の知らないこの世界特有の特別な道具によるものの力だと思う。
「キュー!」
「そうか。なら、人化して、俺の前には出るなよ」
寝起きのミリアは普通に襲いかかってくるからな。
「うん!」
……そろそろ、「うん」とか「やだ」以外にも言葉を教えていった方がいいのかな。
……まぁいいや。今はそんなことより、ミリアだ。
そして、人化してもらった小狐を連れて、ミリアの部屋の前に来たところで、俺は思い出した。
俺、小狐が二度寝するって言ったら一人でミリアのところに行く予定だったけど、そういえば、小狐が居ないと鍵開けれなかったわ。
……色々とこれからのことを考えていたからか、かなり抜けてるな。
……さっきまで考えてた事にも穴なんて無いよな? ……大丈夫、だよな?
まぁいいか。もう考えても仕方ない。
ミリアの部屋の前まで来てしまってるんだからな。
「開けてくれるか?」
「うん!」
小狐にミリアの部屋の鍵を開けてもらって、俺はミリアの部屋に入った。
すると、また昨日と同じ状況でミリアはベッドの上で眠っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます