第80話
希望だった二人の死を見た他の冒険者たちはもう完全に戦意を失ったみたいで、色々な声を上げながら全員ギルドから逃げていった。
……何人か腰を抜かしていた奴らがその場に残っていたけど、それは普通に殺した。
情けない奴ら、と思わないでもないけど、俺が逆の立場だったら、あの男二人が死ぬよりも前に逃げ出していたと思うから、特に強く何かを言うことは出来なかった。
だってさ、あいつらからしたらいきなり毒の付いた糸がどこかから現れて、同業者が死んだんだぞ?
まぁ、一応原因が分かったとはいえ、誰がやったのか、なんてのは全く分からなかっただろうし、あの男二人への攻撃を目にしていたら……いや、それ以前に、何も無いはずのところからいきなり何か音が聞こえてきた時点で相手は透明化になって人を襲うことが出来ると考えて、対処する術を持っていないのなら、普通に逃げるべきだろう。
逃げ出すのが遅すぎるな。
「う、うわぁ!? な、なんだこれ?!」
そんなことを思いつつ、透明化スキルと隠密スキルを解除して、恐怖からか固まっているギルドの受付達がいる所へ足を進め始めたところで、ギルドの外からそんな声が聞こえてきた。
……あぁ、そういえば、ギルドの外は沼化してあるんだったな。
……まぁ、頑張ってくれ。
あの忌々しい受付の人間とギルドマスターを殺した後はあの二人のスキルを奪ってから、地震スキルでギルドを建物ごと潰すつもりだから、それまでには頑張って逃げておいた方がいいぞ。
……できるかは知らないけどさ。
そうして、他の受付達は完全に無視して、俺はあの忌々しい受付の人間の前に無言で立った。
顔を見る。
恐怖に染った顔の裏には「なんで俺のところに……」なんて感情が透けて見えていた。
「くふっ」
思わず笑いが込み上げてきたから、なるべく狂気的に感じられるような笑いを聞かせてやった。
すると、更にそいつの顔は恐怖に歪んだ。
「……こ、こんなことをして、た、ただで済むと思って──ひっ!」
ふざけたことを抜かそうとしていたから、目の前にあった机を蹴り、粉々に壊してやった。
身体強化(小)を使おうと思ったんだけど、レベル的にそんなものを使うまでもないと思い、何もスキルは使わずに。
破片が体に当たったのか、服に赤い血が染みている。
(小)とはいえ、身体強化を使ってたら、死んでたんじゃないだろうか。
そう思っていると、そいつはとうとう腰を抜かしてしまい、地面に尻もちをついていた。
そろそろ殺すか。
かなり気持ちもスッキリしてきたところだしな。
俺はそいつの顔を蹴り飛ばした。
地面に頭をぶつけつつ、そいつはぐちゃぐちゃになってしまった顔を痛そうに抑えている。
そんな顔を俺は思いっきり踏み潰してやった。
そして、そいつは死んだ。
「おい」
「ぁ、ぁ、ひ……」
「ギルドマスターってのはこの上にいるのか?」
それを気にすることなく、俺はそのまま近くにいた別の受付の人間にそう聞いた。
「お前もああなりたいのか?」
さっきの奴を指さしながらそう聞いた。
いくら俺でも恨みの無いやつに対してあんな殺し方はしないんだけど、俺の言葉を本気にしたのか、直ぐにそいつは首を縦に何度も何度も振ってくれた。
ギルドマスターってのは人望がないのかね。
こんなに直ぐに売られるなんて。
「そう。……教えてくれたお礼だ。別に逃げてもいいぞ」
あいつに復讐が出来てかなり気分がスッキリしたからか、俺はそう言って、さっき殺した二人の死体の側まで来ていた。
上に行ってからまたわざわざ階段を使って下に戻ってくるのも面倒だからな。もうスキルを奪っておこうと思って。
一応、あの忌々しい受付の人間も何か持ってないかちゃんとこいつらの後で確かめておくか。
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