第73話

「ね、ねぇ。わ、私、アンデッドで、寝起きには人を襲っちゃうけど、まだ、あんた達の……ラム達の仲間ってことでいい、の?」


「キュー!」


 俺は普通に嫌だから、小狐に確認を取ろうとしたところで、小狐はまた急に鳴き声を上げたかと思うと、未だに口元に俺の血を付けたままのミリアに向かって飛び込んでいったと同時に人化を解除しやがった。


「……え?」


「は?」


 どうする? なんて言い訳をする? 俺は俺たちが魔物なことをミリアに言うつもりなんて一切無かったし、今すぐにでも小狐を怒鳴りつけてやりたい気持ちを抑えつつ、俺はどうしようかを考えた。

 小狐を怒鳴ることなんて、俺に出来るわけがないからな。


「ど、どういうこと、なの?」


「キュー?」


 ミリアは飛んできた小狐のことを膝に置きながら、そう聞いてきた。

 ……もっと良く考えたら何か良い言い訳が思い浮かぶのかもしれないけど、今ここでなにも言わない訳にはいかないから、もう正直に言うしかないんだろう。


「……そいつも、お前と同じで魔物なんだよ」


 とはいえ、俺の事まで話す気は無いから、話すのは小狐のことだけだ。

 

「……え? そ、そう、なの?」


「逆にそうじゃなかったら、その見た目はなんなんだよ」


 見た目と言えば、ミリアもアンデッドだとかいう割に見た目は普通の人間だし、やっぱり俺たちと同じように人化のスキルか何かを使ってるのかな。

 一応聞いておくか。


「それより、今更なんだが、ミリアはなんでアンデッドなのにそんな人間みたいな見た目なんだ? そいつ……小狐と同じように人に化ける何かを使ってるのか?」


「え? ま、待って! わ、私、まだこの子が魔物だってことを受け止めきれてないんだけど……」


 ……別にわざわざ受け止める必要なんて無いと思うから、早く教えて欲しいんだけど。

 もしもそういうスキルを俺たちと同じように使ってるんだとしたら、やっぱり俺が思っているより人化スキルは珍しいスキルじゃないということになると思うし、もっと慎重に動く必要が出てくるからこそ、早く答えて欲しい。


「……と、取り敢えず、この子も私と同じで人間じゃないってことなのね?」


「そう言ってるだろ」


「う、うん。な、なんとなく、分かったわ」


 なら、早く答えてくれないかな。


「私のこの見た目は何かスキルを使ってるわけじゃないわ。最初目が覚めた時は血まみれで体が腐ってるようなアンデッドだったけど、少しずつ回復していって、今ではこんな感じで見た目だけは普通な感じになったのよ」


 なるほど。

 ということは、人化のスキルはやっぱり珍しいスキルってことなのかな。

 それなら、良かった。


「それじゃあ、お互いの秘密を色々と話してスッキリしたところで、そろそろ依頼に行くか」


 なんて言いつつ、俺の秘密は一切話してないんだけど、ミリアはそんな感じに認識してるはずだから、別にいいよな。

 

「う、うん!」


 ? なんでミリアはこんなにテンションが高いんだ? 

 ……まぁいいか。さっさと適当な依頼をこなして、顔を隠せる物を探すとしよう。

 ……依頼が終わったら、小狐をミリアに預けるのもアリかもしれないな。

 もう小狐の正体はバレてるんだし、小狐自信もミリアのことは気に入っている様子。

 これは今度こそ久しぶりの一人の時間が作れるかもな。


「あぁ、そうだ」


 そして、宿を出るために動き出そうとした直後、俺は思い出したように声を出した。

 ギルドを潰そうとしている以上、これは聞いておかないとだもんな。


「ミリア、お前って人間……いや、人種族? のことをどう思ってる?」

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