第67話
「あんた、現金すぎない?」
ミリアが飯を奢ってくれるということで、小狐と一緒にミリアに着いていっていると、突然そう言ってきた。
まぁ、俺もミリアからしたらそんな風に思われるだろうな、とは思ってたけど、それで俺たちから離れていってくれるのなら離れていってくれるで問題は無いし、断る理由がなかったんだよな。
「いいだろ。別に」
「それは……そうだけど、もうちょっと、大切な仲間に奢らせる訳にはいかないから、自分も払うよ、とか無いの?」
ある訳が無い。
だって、別に俺はお前のことを大切な仲間なんて思ってないし。
ついでに言うのなら、小狐のことも当然大切な仲間だなんて思っていない。
そんな奴らとの食事に金を出したくないのなんて当たり前だろう。
……小狐に金を使ったり、小狐と一緒に食事を取ったりしてたのは親狐が怖いからだし。
「無いな」
「うぅ、ま、まぁいいわ! これからは今よりもっと私のことを大切な仲間だって思わせてあげるんだから!」
……まぁ、そうだな。
もしも一ヶ月くらい一緒に過ごしたのなら、確かに俺も今よりはミリアのことを大切だと思うかもな。
今の俺のミリアへの好感度がマイナスなんだし、今より悪くなることなんて早々ないと思うからな。
「あっ、ここよ!」
そうして、何故か自信満々のミリアに対して色々と頭の中で思っていると、店に着いたみたいだった。
俺たちはミリアに続くようにして、その店の中に入った。
……飯を食べ終わった。
ミリアが奢ってくれた飯は普通に美味しかった。美味しくはあったんだが、やっぱりと言うべきか、昼同様小狐の世話は俺がすることになって、少しだけ不快だった。もちろん顔には出さないけどさ。
小狐も成長してない訳じゃない。次からは自分で出来るだろう。……いや、出来るだろうじゃない。次からは絶対に自分でさせる。
親狐も小狐の成長に繋がることなんだ。許してくれるだろう。……ま、まぁ、小狐が少しでも不満そうなら、直ぐに俺が世話をする予定だけど。
やっぱり、怖いし。
「ねぇ、あんたってその子の従者か何かなの?」
ちなみになんだが、その時、俺はミリアにそんなことを言われた。
「殺すぞ」
その瞬間、反射的に俺はそんな言葉が出ていた。
割と冗談抜きで小狐が気に入ってる存在じゃなければ人目なんて気にせずに本当に殺してたと思う。それくらい、俺にとって腹が立つ、嫌な言葉だった。
「それじゃあ、宿に戻るってことでいいわよね?」
そんなやり取りがあったにも関わらず、ミリアは案外心が強いのか、もう全く気にした様子なく、そう聞いてきた。
一応あの時謝ってくれたし、小狐の目もあったから俺も許したんだけどさ、お前はもう少し気にしろよ。
俺も人のことを言えるとは思えないけど、こいつもこいつで結構図太いというか、図々しいというか、精神が強いよな。……俺たちの分の金も払うからか、ミリアはそんなに食ってなかったし、そこを考えたら本当に俺は人のことを言えないんだけどさ。
最初俺たちのパーティーに入りたいって言ってきた時もかなりしつこかったし。
いや、それはこいつが言うには命が掛かってたってぽかったし、気持ちが理解できないとは言わないけどさ。
そう思いつつも、俺はミリアの言葉に頷いて、みんなで宿に戻った。
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