第54話
ゴブリン五匹を殺し終わった。
手加減していたとはいえ、レベル差があるからなのか、結構直ぐに殺し終わった。
その証拠として、小狐の隣にいる気が強そうな女の子はめちゃくちゃ驚いたような表情をしているし、もう少し苦戦している風に見せた方が良かったかな? と俺は思ってしまっているくらいだからな。
小狐達の元に戻った。
小狐は当然と言うべきか慣れた様子だけど、気の強そうな女の子の方は俺に視線を向けてきながら何も言ってこない。
……怯えられてるのかね? 仮にそうだとしても別に俺としてはどうでもいいけど、報酬だけはちゃんと受け取ってもらって後腐れが無いようにしてもらわないと困るぞ。
「あ、あんた……めちゃくちゃ凄いわね! 怪我とかもしてないみたいだし、ほんとに凄いじゃない!」
そう思っていると、気の強そうな女の子は俺に抱きついてきたかと思うと、体をペタペタとしてきながらキラキラとした目でそう言ってきた。
……こいつとの付き合いは今日限りで終わらせるつもりではあるけど、残念なところとかを除いて見た目だけで言うのなら普通に美少女だと思うし、ちょっとだけいい気分かもしれない。
そう思った瞬間、俺を挟むようにして後ろから小狐も俺に抱きついてきた。
……これってやっぱり傍から見たらハーレムってやつだよな。
しかも、めちゃくちゃ馬鹿なハーレムパーティー。
傍から見たらどう見てもゴブリンを倒しただけでまだ安全とは限らない森の中でイチャイチャしてる頭のおかしい奴らだし。
……一応言い訳をすると、確かにちょっといい気分だったのは否定しないけど、あくまでそれは残念なところを除いたらだし、もう一人……いや、一匹に限っては元が小狐だぞ。
……うん。残念なことに全然ハーレムなんかじゃないな。
そもそもそういう対象として俺にこうやってくっついてきている訳ではないだろうしな。
「そりゃどうも。それより、あれはそのまま死体をギルドに持っていけばいいのか?」
正直もうこいつはただ残念なやつなんだろうなと思ってるけど、一応何かスキルを奪われていないかステータスを確認しつつ俺はそう聞いた。
「右耳を切って持っていくか、魔石を持っていけば大丈夫よ」
……魔石とかあるんだ。
俺にもあるのかな。
「わ、私が取ってくるわね!」
気の強そうな女の子はそう言って俺から離れたかと思うと、腰に携帯していたナイフを取り出してゴブリンの死体の方に向かって行ってくれた。
俺はちょうどいいと思い、自分の胸に手を当ててみた。
すると、元がスライムだからか、心臓は動いてなかった。
……これ、今更なんだけど、小狐はともかくとして、あいつに抱きつかれたりするのって結構危険だったんじゃないのか?
もう次があるのかは分からないけど、もしも次また抱きしめられそうになるようなことがあったら、絶対避けよう。
そう心に決めたところで、俺は一つの疑問が頭の中に浮かんできていた。
……意識してた訳じゃないから曖昧なんだけど、あいつ、心臓動いてたか?
ナイフを片手にゴブリンの右耳を切って、心臓部分から魔石を取り出しているそいつを見て、俺はそう思った。
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