第51話
「取ってきたわよ!」
依頼の紙を手に持ち、元気よく俺達の元に戻ってきた気の強そうな女の子を見て、俺は犬みたいだな、と思った。
見た目的には手を噛みつかれそうな感じだけど、実際はめちゃくちゃ人懐っこい犬みたいな感じだ。
……異性として見るのは色々と残念すぎるし怪しかったからあれだったけど、ペットとして見るとちょっと可愛いかもしれないな。
……うん。小狐もペットみたいなもんだし、やっぱりパーティーには要らないな。
どうせ受け入れる気なんてないんだし、もう今断ってやりたいけど、めんどくさくなってお試しっていうのを受け入れてしまったのは事実だからな。今日くらいは我慢しよう。
それで、さっきはああ言ったけど、報酬はちゃんと分けてやって後腐れを無くそう。
「ほら、せっかく取ってきたんだから、早く行くわよ!」
……なんでちょっと偉そうなんだよ。
さっきまで半泣きだった癖に。
「なんの依頼を持ってきたのかは知らないが、受付の所に持っていかなくていいのか?」
「え? あっ、わ、忘れてたわ! だったら、早く受付の方に行くわよ!」
こいつ、本当に大丈夫か?
内心でそんなことを思いつつ、俺は頷いて小狐と一緒に受付の方に向かった。
そして、依頼を受けた。
昨日とは違う受付の人間だったから、良かった。
昨日と同じ人間だったら腹が立ってたところだろうからな。
「依頼の内容はゴブリンの討伐ってことだったけど、場所、分かるか?」
「えぇ、分かるわ。私に任せなさい!」
俺がそう聞くと、俺の役に立てることが嬉しいのか、心做しか嬉しそうに、そして自信満々にそう言ってきた。
今更なんだけど、討伐依頼、受けられたんだな。
昨日多少上がったであろう信頼度のおかげかな。
それとも、今日は三人いるから受けられたのか。
まぁ、受けられたんだし、別になんでもいいか。
「ねぇ、そういえばあんた達、なんでそんなにくっついてるのよ?」
そう思って、ゴブリンが居るという場所に案内をされながら歩いていると、急に気の強そうな女の子にそんなことを聞かれた。
……気の強そうな女の子って、そろそろ呼び方が不便になってきたな。……別に今日だけの関係の予定だし、名前なんて聞かないけど。
それよりも、くっついて歩いている理由だったか? ……そんなの、俺が聞きてぇよ。
「知らない」
「なんであんたも分かんないのよ」
いや、だって抵抗出来ないから仕方なく受け入れてるだけだし。
「まぁいいわ。それよりも、今はまだお試しとはいえ、パーティーメンバーなんだから、名前くらい教えなさいよ」
嫌だけど。
普通にもう明日からは他人なんだし、わざわざ教える意味が無い。……明日からって言うか、今も別に他人だと思ってるけど。
そもそもの話、俺たちに名前なんて無いしな。
「断る」
「な、なんでよ! いざって時に名前が分からなかったら連携が取れないでしょ!」
……ちょっと正論っぽいからこそ反論しにくいけど、名前無いし、やっぱり言えない。
適当な名前を考えて名乗ってもいいけど、めんどくさいしな。
……いや、こうやって人間の街にいる以上、いつかは考えないとダメだって分かってはいるんだけど、中々いい名前が思い浮かばなくてな。やる気がでないんだよ。
「……信用してないやつに名前なんて教えられない」
「そ、それは……わ、分かった、わよ。……だったら、私の名前も教えてあげないからね!」
「あぁ、それでいいから、さっさと行こう」
確かに不便ではあるけど、俺にとっては名前を教えてもらわない方が後腐れが無くて好都合だし、文句なんて言わずに俺はそう言った。
すると、気の強そうな女の子は明らかに不満そうだった。
……なんでここまで俺たちに執着するかね。
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