第50話

「え? え、えぇ、そうね。あ、あんた達、依頼を受けるのに困ってるんじゃないの?」


「まぁ、そうだな。確かに困ってたよ。それで?」


「だったら! 私とパーティーを組まない!?」


 …………うん。意味が分からない。

 どういう考えをしたら依頼を受けるのに困ってたらこいつとパーティーを組むなんて考えになるんだよ。


 正直、今すぐにでも断ってやりたいけど、何か俺の知らないようなメリットがあるのかもしれない。

 そう考えると、直ぐに断るのはあまり良いことではない気がするな。


「……依頼を受けるのに困ってたらなんでパーティーを組むなんて話になるんだ?」


 溜息をつきたい気持ちを我慢して、俺はなるべく内心のめんどくさいという感情を隠してそう聞いた。


「私ならあそこの中の依頼を取ってこれるからよ!」


 自信満々にそう言ってきた。

 ……いや、別に俺だって取ってこようと思えば取ってこれるからな? ……嫌だけど。


「それ以外のメリットは?」


「えっ?」


 えっ? じゃねぇよ。

 それだけのメリットでなんでパーティーなんて組むと思ったんだよ。

 確かにあの中から依頼を取りに行くのは嫌だし、誰かが取ってきてくれるというのなら嬉しいけど、それならその時だけ報酬を払って依頼を取ってきてもらえばいいだけの話だろ。


「え、えっと……わ、私、隠密とか、敵の索敵とか出来るわ!」


 ……なんで俺はこいつの面接みたいなことをしているんだろうか。

 そもそも、言っちゃ悪いけど、俺たちがパーティーを組むメリットって本当に無いんだよな。

 だって、俺以外の前で倒した魔物を小狐に食べさせる訳にはいかないし、それじゃあ食費代が浮かない。

 うん。いらないな。


「悪いんだが、他を当たってくれ」


 かなり絞り出して言った言葉っぽかったし、本当かは知らないけど、隠密とか敵の索敵が出来るみたいだし、強奪スキルを発動させても良かったんだど、昨日考えた懸念があるし、そもそも、なんかもうこいつからはスキルを奪う気が起きなかった。

 だって、なんか気が強いのは見た目通りなんだけど、色々と残念すぎてバカバカしくなってそんな気分じゃないんだよ。

 人の心なんてもう捨ててるけど、ただでさえこれだけ残念なのにスキルまで奪われるようなことでもあってみろよ。……もう目も当てられないぞ。

 ……まぁ、それでも強奪スキルを発動させないのは昨日の懸念が七割くらいの理由なんだけどな。


「な、なんで?! わ、私、役に立てるわよ!?」


 俺の拒絶の言葉を聞いた気の強そうな女の子は泣きそうな顔でそんなことを言ってきた。

 ……いや、そんな顔になるほどか? 一応言っておくけど、俺に泣き落としなんて通用しないからな?


「そうか。それでも、俺達には必要ない。だから、他を当たってくれ」


 そう思いつつ、俺は冷たく突き放すようにそう言った。

 もうさっさと依頼の紙を取りに行きたいからさ。


「な、なら、お試しってのはどう!? 今日の依頼の報酬は要らないからさ!」


 すると、体を俺に押し当てるようにして、必死な表情でそう言ってきた。

 ……俺が男の可能性もあると思ったから、今度は体で誘惑しようとしてるのか? ……確かに可愛いとは思うけど、胸、ほぼ無いし、そんなに体をくっつけられても人肌が温かいなぁ、くらいにしか思わないぞ。

 ……いや、まさかとは思うけど、この間にスキルを奪ってたりしてきてないだろうな!?

 色々と残念すぎるせいで完全に警戒心が抜け落ちてしまってたけど、普通に考えて、ここまでして昨日冒険者登録したばかりの俺たちとパーティーを組みたいなんて怪しいだろう。


(ステータス!)


 レベル:257

 名前:無し

 種族:盗賊スライム

 スキル:超音波Lv10、嗅覚強化Lv10、暗視Lv10、不意打ちLv10、打撃攻撃耐性(小)Lv10、聴覚強化Lv8、聖魔法耐性(極小)、毒生成Lv10、毒耐性Lv10、糸生成Lv10、噛みつきLv10、打撃攻撃Lv10、ファイヤーボールLv7、ウォーターボールLv8、隠密Lv2、俊敏Lv2、威圧、痛み耐性Lv2、農家Lv3、農具扱いLv2、地震、魔法耐性、我慢Lv3、投擲、体術、身体強化(小)、囮、咆哮Lv2、霧Lv2、透明化Lv3、透過Lv2、適応、瘴気耐性、弱点生成Lv2、風の刃Lv2、風圧Lv2、光るLv3、ライトLv3、フラッシュLv4、沼化Lv8、幻覚、悪夢、弓術、硬化Lv2、空間作成Lv2、不死身Lv2、人化Lv2、時間加速

 ユニークスキル:強奪Lv2

 称号:転生者


 ……特に何かを奪われてる様子は無い、か?


「……分かったよ。なら、依頼を取ってきてくれ。……一応言っておくけど、俺は本当に報酬を渡さないからな」


 ステータスを確認した俺はもう面倒だと思い、一度この話を受けてから終わった時に改めて断ろうと思ってそう言った。

 

「だ、大丈夫よ! 今日で認めてもらって、パーティーメンバーにしてもらうんだから!」


 すると、パァっと笑顔になったかと思うと、また俺に抱きついてきた。

 もう警戒するのもバカバカしい程の顔だが、一応俺はまたステータスを確認した。

 特に何も問題は無かった。


「そうか……まぁ、ならさっさと依頼を取ってきてくれ」


「う、うん! 任せて!」


 名前も聞いてない気の強そうな女の子は俺の言葉に元気よく頷いて、依頼を取りに行ってくれた。

 それと入れ替わるようにして、何故か小狐が俺に抱きついてきた。

 ……傍から見たらこれがハーレムってやつなんだろうか。

 俺は全然嬉しくないぞ。

 一人はよく分からない残念で怪しい女の子だし、もう一人はシンプルに小狐で、バックに怖い存在が常に見張ってる可能性があるんだ。

 嬉しいはずがない。

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