第49話

 ギルドに着いた。

 朝だからか、昨日と違って人が多い。

 本気で出直そうかな? と思うほどだ。

 俺の背がかなり高い方だったのならともかく、そういう訳でもないし、あの人の群れの中から依頼の紙を受付のところに持って行ける気がしないし。

 ……ただ、だからといって依頼は早めに受けておきたいんだよな。

 今の俺は一文無しだし、なるべく早く金は手にしておきたいんだよ。


「はぁ」


 小狐に依頼の紙を持ってくるように頼んで見ようかな、とか本当に一瞬だけ考えたけど、小狐をあの中に行かせて、怪我でもさせてしまったらと考えると直ぐにそんな考えは消えた。


「ねぇ、ちょっといい?」


 仕方ない。

 俺が行ってくるか。

 そう考えたところで、後ろから女の子? のそんな声が聞こえてきた。


「ちょっと、あなた達に言ってるのよ! って、え?」


 人は大勢いるし、まさか俺たちに話しかけている訳では無いだろうと無視をして、あの中に行く覚悟を決めようとしていたところで、今度は肩に手を置かれながらそう言われそうになったから、体には触られないように腕だけは掴んで言葉を聞いた。

 ……俺の強奪スキルはユニークスキルなんて言うくらいだし、同じスキルを持っているなんてことは無いだろうけど、似たようなスキルは持っている可能性があるからな。

 気安く体に触れさせるなんてことをするはずがない。


 腕を掴みながら、顔を見る。

 予想通りと言うか、声を聞いた通り女の子だった。

 小狐とは違い、気が強そうな顔をしたツインテールの赤髪の女の子だ。

 ……リアルでツインテールとか初めて見たかもしれない。

 いや、今はそんなことより、なんで俺に声をかけてきたのか、なんで俺に触れようとしてきたのか、が大事だ。


「な、何するのよ!」


 ……何って、そっちがいきなり触れようとしてきたんだろうが。

 どんなスキルを持っているのか分からない以上、警戒するのは当たり前だ。


「何か用か?」


 もしかしたら高ランクの冒険者の可能性もあるけど、見て感じた限り、あまり強そうには思えない。

 もしもこれが高ランクの冒険者なんだとしたら、余裕でこのギルドを潰せることになるし、普通に俺と同じくらいの底辺ランクなんだとしたらもっと言葉遣いを気にする意味なんて無いし、俺は言葉遣いを気にすることなくそう聞いた。

 

「あ、あんた達、昨日登録したばかりの冒険者よね?」


 すると、俺の態度が予想外だったのか、何故か目の前の気が強そうな女の子は少しだけ驚いたような反応を見せてから、直ぐにそう聞いてきた。

 ……どうしような。見た目が女の子だったからあまり警戒してなかったんだけど、これ、シンプルに絡まれてるだけだったりするのか? だとしたら普通に面倒なんだが。


「てか、早く手を離しなさいよ!」


 俺が内心でそんなことを思っているとも知らずに、今度は怒ったように腕を掴んでいた俺の手を振りほどいて来た。

 ……忙しいやつだな。こっちは忙しいんだから、早く要件を言ってくれないかな。


「確かに俺たちは昨日登録したばかりの冒険者だが、それで、何の用だ?」


 もうかなり面倒くさくなってきてるけど、俺はなるべく優しい感じにそう聞いた。

 理由としては単純でさっさと要件を話して欲しかったからだ。


「お、俺? ……あ、あなた、女の子じゃないの?」


「好きな風に思ってくれたらいい。それよりも、何度聞かせるんだよ。要件を言ってくれ」


 下半身にあれがある感覚はあるから、人化した俺は男で間違いないんだろうが、人化する前はスライムだし、多分無性だ。

 だからもう正直性別をどう思われようとどっちでもよかった。

 まだ俺は自分の見た目を見たことは無いけど、中性的な見た目ってことは分かってるからな。

 と言うか、いつになったらこの子は要件を話してくれるんだよ。

 

「え? え、えぇ、そうね。あ、あんた達、依頼を受けるのに困ってるんじゃないの?」


「まぁ、そうだな。確かに困ってたよ。それで?」


「だったら! 私とパーティーを組まない!?」


 …………うん。意味が分からない。

 どういう考えをしたら依頼を受けるのに困ってたらこいつとパーティーを組むなんて考えになるんだよ。

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