第48話
「キュー……」
結局俺はあれからずっと小狐が起きるまで何もせずに過ごした。
たまに人が通ったりして視線を向けられたけど、視線を向けられただけで特に問題は無かった。
【スキル、時間加速を獲得しました】
小狐も目を覚ましたところだし、そろそろギルドに行こう。
そう思ったところで、いつも俺が強奪スキルを発動させたら聞こえてくる声でそんな言葉が聞こえてきた。
……何だ? これ。
俺、強奪スキルなんて発動させてないよな?
しかも俺の速度とかが加速する訳じゃなく、時間が加速って……弱くないか?
……結局、考えても分からないし、発動させてみるのが一番手っ取り早いか。
【時間加速】
スキルを発動させた。
その瞬間、歩いてくる人の動きが明らかに早くなった。その人たちに違和感を感じている様子は無い。
俺も手を軽く振ってみる。
思っていたよりも早い。
……やっぱりこれ、俺だけ時間の流れ? が早くなってるって感じだよな。
……さっきみたいに小狐が寝ている間、身動きができなくて早く時間が過ぎて欲しい、みたいな時にしか使えないようなスキルだぞ、これ。
……まぁ、これからの事を考えたら、嬉しいスキルではある、のか? ……俺以外も早くなるんだから、戦闘では使えなさそうだけど、こういう時は便利か。
……なら、もっと早くくれないかな。
小狐と出会ってから、小狐が眠っている時間は割と暇だったぞ。
今日は特にだったけど、それがスキルを手に入れることが出来た原因だったりするのか?
まぁいいか。
予定通り、小狐が目を覚ましたんだし、さっさとギルドに行こう。
幸いと言うべきか、さっき使った時間加速スキルのおかげでもう小狐は完全に目を覚ましているみたいだしな。
そして、昨日と同じように小狐を服の中に隠しながら裏路地まで俺はやってきた。
あそこで人化するのは人目につきそうだったからな。
昨日の夜あそこで人化を解除させたのは夜だから人通りが少なかったっていうのと、シンプルに俺が疲れてたからだからな。
睡眠で休憩は出来てないけど、夜の間に俺も昨日の疲れは取れたし、少しは冷静になってるはずだ。
「人化出来るか?」
「キュー!」
小狐が俺の言葉に返事をするのと同時にボフッ、という音を立て、煙が出てくる。
そして、いつも通りの美少女の姿に小狐は変身していた。
「昨日と同じで人の言葉以外は喋っちゃダメだからな。分かったか?」
「うん!」
「よし、なら行くか」
ギルドに向かって歩いている途中、朝だし、腹が減ったりしないのか? という疑問が湧いてきたけど、余計なことを言って「確かに言われてみればお腹が空いた」みたいな感じになられても困るから、俺は何も言わずにそのまま小狐を連れて歩いた。
今日は魔物の討伐依頼を受けられたらいいな。
そうすれば、小狐の食事も外で済ませられて、金を使わずに済むし。
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