第47話

 小狐が串焼きを食べ終わった。

 ……小狐が串焼きを食べている間、俺は何もすることがなく、ただ小狐が食べる串焼きを持って、小狐の食べている姿を見ているだけだった。


「今日はそれで我慢できそうか?」


「うん」


 良かった。もう金は一銭もないからな。我慢できないと言われても何も出来ないし、かといって俺が何もしなかったらしなかったで親狐の不興を買いそうだし、本当に良かった。


 ……今日のギルドでの出来事は腹が立ったけど、やっぱり金のためには明日も行かない訳にはいかないよな。

 ……あー、でも、ギルドに行ってあいつの姿を見たらまた腹が立ってくるだろうし、嫌だなぁ。

 ……またあいつから依頼を受けて、報酬を受け取る時にこっそり手に触れて、強奪スキルでも発動させてみるか? ゼツですら最初はスキルを奪われたことに気が付かなかったくらいなんだ。

 人間が気がつけるとは思えない。


 …………いや、ダメだな。

 流石に早まりすぎだ。

 最初は確かに気が付かないだろうが、いつかは絶対に気がつくし、気が付かれた時にもしもギルドの中にスキルを発動させたことを感知する道具でもあったらどうする? それを確認でもされたら俺が何かをしたことは一目瞭然だし、ダメだな。


「……はぁ。……小狐はそろそろ寝るか?」


「うん」


「なら、俺の服の中に隠れろ」


「うん」


 俺の言葉に頷いた小狐は人化を解除せずにそのままの姿で俺の服の中に潜り込んできた。

 当然と言うべきか、人化した状態で体全部が隠れられるはずもなく、なんか、傍から見たら変なことをしているみたいな感じになってしまった。


「ん!? お、おい……」


 これは不味いと思い、やめさせようと思ったのだが、その瞬間小狐は人化のスキルを解いて、俺の服の中で元の小狐の姿に戻った。

 ……最初から人化を解いてから服の中に入れよって思わないこともないけど、誰かに見られる可能性を考えたらこっちの方が良かったのかもな。

 ……見た目だけ無駄に美少女なせいでびっくりしたじゃないかよ。


 まぁ、もうそれは置いておいて、結局どうしようかな。

 ギルド以外に金を稼ぐ方法があればいいんだけど、少なくとも今は知らないしな。

 割り切るしかないか。

 ……小狐ばっかりに食べさせてるけど、本当は俺もせっかく人化出来たんだし、何か食べ物を食べたいんだよ。

 普通に店とかにも入りたいし。


 ……明日結局ギルドに行って依頼を受けるのはもう良いとして、夜の時間、暇過ぎないか?

 動いたら小狐が目を覚ましてしまうかもしれないし、まさかとは思うけど、朝になるまでここで座って待つしかないってことか?

 ……シンプルに苦痛なんだけど。

 スライムの姿ならまだしも、人化した状態なら更に。


 ……どれだけ心の中で悪態を吐いたって、親狐の存在がある以上、俺はこのままここで大人しく小狐が気持ち良く目を覚ますのを待つしかないんだけどな。

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