第45話
どれだけ腹が立とうと、このギルドにいる人間の実力が全く分からない以上、俺から手を出すことなんて出来ないから、そのまま大人しく少ない報酬を貰って小狐と一緒にギルドを出た。
「さっさと外に出て、今日はもう寝るぞ」
そして、そう言った。
すると、小狐は俺の雰囲気から俺が苛立っていることを察したのか、何故か俺の手を握って体をくっつけてきた。
……今の小狐の見た目は美少女だから何も思わないのか? と聞かれたら嘘になるけど、元が小狐だしなぁ。やっぱりちょっと微妙だよな。
耳が腕に当たるのはちょっとだけいい気分だけど。気持ちいいし。
「……はぁ。ありがとよ」
小狐なりの気遣いだろうし、少しは気分も落ち着いたから、俺は素直にお礼を言った。
小狐と一緒にいるのは嫌々だし、面倒だとは思ってるけど、小狐自身のことを別に嫌いな訳では無いからな。
良いスキルを持ってたから、奪おうとはしてたけど。
「……キュー」
俺の言ったことがあるからか、小狐は小さく俺の言葉に答えるようにそんな鳴き声を上げてきた。
……小さくても鳴き声は上げるなって。
「そういう時はどういたしまして、とか言っておけばいいんだよ」
「キュー? どう、いたし、まして?」
「そう。そんな感じだ」
たどたどしいながらも小狐は首を傾げながら俺の真似をして、そう言ってきた。
……適当に言ったことだったんだけど、ちゃんと言葉を喋れてるな。……はぁ。憎たらしいことに、やっぱりちょっとだけ可愛いな。
残念なことにこれからは小狐と長い間一緒に居ないとだと思うし、俺は小狐に言葉を喋れるようになってもらうためと適当なことを色々と一方的に話しながら、街に入ってきた門に向かって歩いていた。
すると、俺も悔しいことに割と楽しかったのか、直ぐに門が見えてきた。
……まぁ、せっかくの二度目の人生だ。楽しめないよりはよっぽどいいし、別にいいか。
「…………門が閉まってるな」
……いや、俺には暗視スキルがあるし、夜だとしても遠目でなんとなく見えてたし分かってたんだけど、念の為に近づいてみてもやっぱり閉まってたな。
……え? これ、まさかとは思うけど、夜は閉めるもので出入り出来ないのか?
確かに、魔物とかが入ってきたら危ないもんな。……もう少なくとも二匹は絶対に入り込んでるけど。
門番の姿も無いし、どうしような。
もう無理やりにでも壁をよじ登って街の外に出るか? ……今みたいに夜で辺りが暗かったのならともかく、朝になって明るくなってきたら絶対バレるしダメだろ。
一応、朝になったら普通に門から入ってこれるかもだけど、門から出入りした人間を記録されてたりしたら明らかにおかしいことに気が付かれてしまうからな。やめておいた方がいいだろう。
……はぁ。仕方ない。今日のところは街の中で眠る場所を探そう。
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