第42話
洞窟のことをそれとなく、ここに来る途中にたまたま聞いたってことにして、受付の人に聞いてみた。
……実際、嘘は別についていない。ここに来る途中に洞窟の調査のことをたまたま聞いたのは本当だし。
「正直に申しますと、気になる気持ちは理解できますが、まだ冒険者になりたてのあなた方にお話することは出来ません」
……まぁ、そう上手くはいかないか。
しつこく聞いても教えて貰えそうな雰囲気が無さそうだし、大人しく諦めるか。
……たまたま聞いただけの洞窟のことをしつこく聞くのなんておかしいもんな。
ただでさえ俺は怪しまれるようなことを何度かしているんだから、これ以上は絶対にやめておいたほうがいい。
まだ見たことはないけど、今までの反応からして、俺の見た目が女の子みたいな見た目じゃなければもうとっくの前に怪しまれていたことだろうしな。
「そうですか」
「申し訳ありません」
「いえいえ、こちらこそ、無理なことを言ってすみませんでした」
そう言って、俺は小狐を連れて依頼が書いてある紙が色々と貼ってあるところまで移動した。
これからのためにも、ギルドからの信頼度っていうのはあげておいた方がいいと思うし、単純に金も欲しいからな。
あいつらから奪った金があるにはあるけど、あいつら、はした金しか持ってなかったし。
一文無しだった俺にとって嬉しかったのは否定しないけどさ。
言葉が通じてる時点で分かってたことだけど、文字が読めるな。
「一応聞いておくんだけど、小……あー、お前、何か受けたい依頼とかあるか? 何かあるのなら、指を指してくれ」
「……」
こんなところで人の見た目をしているのに小狐なんて呼び方をするのはおかしいと思われると思って、俺は呼び方に気をつけつつそう聞いた。
すると、小狐は無言で俺の顔を見ながら首を振ってきた。
まぁ、そうだよな。
……と言うか、そもそもの話、小狐は読めてるのか? 言葉は通じてるっぽいけど、読めてるのかは微妙だぞ。
「なら、俺が選ぶな」
そう思いつつ、小狐にそう言って、俺は貼ってある依頼をさっきよりちゃんと見始めた。
その結果、今俺たちが受けられる依頼にろくなものが無いことが分かった。
……それに不満を持って依頼を受けなかったとしても、結局信頼度は上がらなくて報酬の良い依頼を受けられないし、受ける以外に俺に選択肢はないんだけどさ。
……いや、一応冒険者をやらないって選択肢はあるかもだけど、やらなかったら金が手に入らなくて人間として過ごすときに不便だし、ギルドで情報を聞いたりもできないし、ほぼ無いみたいなもんだな。
「これ、受けます」
そんなことを思いつつ、俺は受付に剥がした依頼の貼り紙を持っていった。
内容はどこかの家の庭の草むしりで報酬は銅貨四枚……つまり串焼き二本分だ。
庭の大きさにもよるけど、割に合ってなさすぎる依頼だと思う。
まぁでも、最近はずっと殺伐としてた毎日だったし、たまにはこうやってのんびりと草むしりなんかをするのも悪くないのかもしれない。
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