第41話

「はい、大丈夫ですね」


「……」


「どうか致しましたか?」


 水晶玉に手をかざすと同時にいきなり小狐の手を握った俺に対して受付の人は不思議そうにそう聞いてきた。


「あー、この子も、どうせなら冒険者になっておきたいなと思いまして」


 怪しまれないように、俺は咄嗟にそう言った。


「もちろん構いませんよ。では、そちらの方もこれに手をかざしてください」


 ……咄嗟に出た言葉ではあったけど、何故か俺が大丈夫だったんだから、小狐も大丈夫だろう。……と言うか、大丈夫であってくれ。

 小狐から食べ終わった串焼きのゴミを受け取りつつ、俺は内心でそう祈った。


「手をかざしていいぞ」


 俺の言いつけを守ってか、ちゃんと鳴き声を上げずに小狐は視線で俺に確認をしてきたから、俺はそう言った。

 すると、直ぐに小狐は笑顔になって、俺の言った通りに水晶玉に手をかざした。

 ……当然と言うべきか、単純に良かったと言うべきか、俺と同じで何も起きない。


 ……小狐は言うてもまぁ分かるんだけど、俺はなんでだ? 根本的な俺の中に犯罪を犯したって意識が無いからか? ……理解はしてるつもりだけど、俺は魔物だし、人間を殺しても問題ないと思ってるからこそ、あの魔道具が反応しなかったってことか?

 ……それとも、まさかとは思うけど、親狐に何かされたか? ……どうしような。そっちの方が可能性が高いかもしれない。

 仮にそうだとしたら、助かってはいるんだけど、やっぱり怖いって。


「はい。そちらの方も大丈夫ですね。……では、お二人とも、こちらをどうぞ」


 そう思っていると、受付の人にそう言われて、光の玉のようなものが目の前に現れたかと思うと同時に体の中に入っていった。


「……これは?」


「そちらが冒険者である証になります。専用の道具を用いることで確認できますので、ご安心ください」


 ……ご安心って、何を安心したらいいんだよ。

 俺は体の中に何か異物を入れられたような気分でなんか微妙な感じだぞ。

 ……当たり前のことのように話してくる受付の様子を見るに、この世界ではこれが普通なんだろうから、何も言わないけどさ。

 ただでさえ怪しまれていてもおかしくない言動をしているのに、常識さえも知らないやつだと思われたら……いや、俺の見た目は女の子っぽいらしいし、案外ただの世間知らずのガキだと思われるだけだったりするかもな。

 ……まぁ、変に思われないに越したことはないんだし、余計なことは言わなくていいはずだ。


「分かりました」


「これにて冒険者への登録は終わりですが、なにか質問がございましたら遠慮なくお聞きください」


 早速あの洞窟について聞いてみたいところだけど、それを我慢しつつ、俺は依頼の受け方を聞いた。


「あちらに貼ってあります張り紙をこちらに持ってきていただければ、書かれた内容のギルドからの信頼度により受けることが出来ます」


「……その信頼度っていうのはどうやって上げるんですか?」


「依頼を無事にこなしてくれれば自動的に上がっていきますよ。……当然、失敗すれば信頼度が下がり、最終的には何も依頼を受けられなくなります。そして、冒険者ランクも信頼度により上がっていくことがあります。当然ながら信頼度だけではなく、実力も必要ですが」


「なるほど。ありがとうございます」


 よし、次は本題のあの洞窟のことを聞くか。

 まだ調査に向かった人は戻った様子はないけど、聞くだけならただだからな。

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