第40話
……これか?
多分、ギルドってやつを見つけたと思う。
その間に犠牲になったのは俺の分として買ったはずの串焼き一個だ。
……現在進行形で小狐が俺の後ろをついてきながら食べてるし。
まぁ、スライムに転生してから何も食べずに今まで生きてきたんだし、たかが串焼き一個で小狐が余計な鳴き声をあげずに黙っていてくれるのなら、安いものか。
そんなことを思いつつ、串焼きを食べている小狐を連れてギルドの中に入った。
一応、小狐との距離を詰めながら。
……もしも俺たちが魔物だということがバレた時、俺が死ぬのも問題だけど、俺が無事で小狐が死ぬっていうのも実質的な俺にとっての死刑宣告だからな。
小狐のことはなんとしてでも守らないといけない。……主に俺のために。
人はあんまりいないな。
時間帯の問題か?
まぁ、どうせ誰かと絡む気なんてないし、好都合か。
俺の見た目って女性……と言うか、女の子っぽいらしいし、なんでこんなところにいるんだって変に絡まれる可能性もあったからな。
……取り敢えず、目の前の何かの受付? っぽい場所に行ってみるか。
この前洞窟に来た奴らの言っていたことから考えるに、何かの依頼をする場所だったりするのかね。
特に何か出したい依頼なんて無いけど、依頼を出す以外の何かもできるかもだし、俺はそのまま受付の人に向かって近づいた。
「どういったご用件でしょうか」
すると、俺は受付の人にそう聞かれた。
「……えーと……冒険者になりたいんですけど、どうしたらいいんですか?」
少し悩んだ結果、俺はそう聞いた。
わざわざ用件を聞いてくるってことは依頼を出す以外にも何かができるんだということだろうし。
「かしこまりました。でしたら、こちらに手をかざして下さい」
受付の人は水晶玉のようなものを机の下から取り出しながらそう言ってきた。
「……」
「どうかされましたか?」
なかなか言われた通り手をかざそうとしない俺に向かって受付の人は不思議そうにそう聞いてきた。
……どうしような。
もしも俺が思っているより人化スキルが珍しいスキルでは無かった場合、当然警戒されているだろうし、それを見破る道具が作られていたっておかしくは無い。
……問題は今目の前に置かれているこの水晶玉がそういうのを見破る道具かってことだ。
……思い切って聞いてみるか? 多少怪しまれるかもだけど、もしもそういう道具だった場合は何とか回避しないと絶対不味いと思うし。
「あの、これはなんなんですか?」
「こちらは手をかざしてくれた方に犯罪歴が無いのかを確認する魔道具ですよ」
人化した魔物を見破るものでは無かったことは助かったけど、結局何も変わってなくないか?
だって俺、路地裏だけじゃなく、普通に小狐を捕まえようとしていた人間も殺してるし。
バレなきゃ犯罪じゃない理論でどうにかなったりしないかな。
「あの?」
やばい。
流石にこれ以上手をかざさずにいるのは限界か。
ここで逃げ出したとしてももう顔は覚えられてるし、一か八か、手をかざしてみるしかない、か。
「すみません。ちょっと緊張しちゃって」
「ははは、初めてだとそういう方も多いですよ」
そして、顔には出さずに内心で小狐を連れて逃げるシミュレーションをしながら俺は手をかざした。
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