第39話
恐らく、きっと、多分満足したであろう小狐を連れて、俺は路地裏を後にした。
それで、ギルドってのはどこにあるんだろうな。
「キュー」
「……悪いんだけど、あんまり声は出さないでくれるか?」
急に隣を歩いている小狐が鳴き声を上げたから、俺はそう言った。
別に俺と二人の時ならいいんだけど、こんなに人目のあるところで人の姿をした女の子が人の言葉じゃない「キュー」なんて鳴き声を上げてたらどう考えてもおかしいからな。
小狐にとっては不便かもだけど、せめて今の間だけでも控えて欲しい。
「キュー?」
俺がいきなりそんなことを言ったからか、小狐は首を傾げながら、言ったばかりだと言うのに不思議そうな鳴き声を上げて俺の方を見つめてきていた。
なんて言えば小狐にも伝わる……と言うか、納得してくれるかな。
「……俺が今喋ってるようなこういう言葉ならいいからさ。ほら、さっき俺の言葉の真似をしてた時があっただろ。あんな感じだ」
俺がそう言うと、小狐は分かってくれたのか、何も言わずにに頷いてくれた。
良かった。ちゃんと納得してくれたみたいで。
……と言うか、今更なんだけど、なんで小狐って言葉は通じるのに話すことは出来ないんだろうな。
……まぁ、別にどうでもいいか。なんとなく気になりはしたけど、別にそこまで小狐に対して興味なんてないし。
「そこの姉ちゃん! 串焼き一本銅貨二枚で安いよ! 一本どうだい?」
……多分、俺に言ってるんだよな。
銅貨二枚っていうのが本当に安いのかは知らないけど、買える値段ではある。さっきあの男たちから奪ったものがあるからな。
ただ、そんなに俺は女性に見えるのか。
鏡……があるのかは知らないけど、早く自分の顔が見て見たくなってきたよ。
「一本……あー、いや、二本ください」
そんなことを思いながら、俺は声をかけてきた串焼きを売っているおっちゃんに近づいて、そう言った。
串焼きを買うついでにギルドの場所を聞こうと思って。
「はいよ!」
おっちゃんは直ぐに何かよく分からないタレを塗りながら串焼きを作ってくれた。
そして、それと交換するように俺は銅貨を四枚渡した。
「ありがとうございます。……ところでなんですけど、ギルドって場所、どこか知りませんか?」
「ギルド? どのギルドかは分からないけど、あっちに行けばあるよ」
俺の質問におっちゃんは快く指を指して場所を示してくれながらそう言って教えてくれた。
「ありがとうございます!」
そのことに礼を言って、俺は直ぐにその場を小狐と一緒に後にした。
「……小狐、食べるか?」
そして、後ろを着いてきていた小狐にそう聞いた。
「キューっ!」
すると、鳴き声を上げるなって言ってるのに、小狐は元気よく鳴き声を上げて嬉しそうにしていた。
俺はそんな小狐に向かって喉に当たらないように気を配りつつ口を閉じさせるために口の中に串焼きを突っ込んだ。
良し、狙い通り黙らせることに成功したな。
串焼きを食べて静かにしているうちにさっさとおっちゃんに教えてもらったギルドに行こう。
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