第28話
「ガァァァァァ」
ゼツが咆哮を上げた。
そこに俺の毒に苦しんでいる様子は無かった。
毒に耐性はあるってことか。
俺がそう思った瞬間、ゼツは口から炎……ブレスを吐いてきた。
小狐は人化したこともあって上手く避けれていたが、俺は普通に焼かれることになった。
俺のスライムボディがじゅうううと音を立てるようにして焼けていった。
熱っつ!? 熱い熱い熱いって!
さっき奪ったばかりの不死身スキルのおかげで死ぬことは無いが、痛み耐性スキルがあっても地獄のような熱さだぞ。
「キュー!」
体が再生する度にゼツこブレスに焼かれて溶けていくから、ブレスから逃れることも出来ずにゼツがブレスを吐き終わるのを待つしかない、と思ったところで、ブレスの外から小狐のそんな鳴き声が聞こえてきた。
そうだった。小狐がいるんだ。
何か今のあいつに効果のある攻撃手段を小狐が持っているかは分からないけど、行け! 取り敢えずブレスさえ終わらせてくれれば俺がこの地獄から開放される。
そして解放さえされれば、次は俺のターンだ。
「キューっ!」
俺がそう思った瞬間、小狐はまたゼツに対抗とばかりにゼツと同じように炎を口から吐き出していた。
……美少女の見た目で炎を吐いているのはまぁ置いておくとして、あの見た目のゼツに炎なんて通用するのか? 見た目以前にそもそも自分で炎を吐いてるくらいだし。
焼かれながらも少しだけ痛みに慣れてきたのか冷静にそう思っていると、ゼツのブレスが止まった。
まさか小狐の炎が効いたのか?
(弱点生成)
そう思いつつも下手にそれを確認している間にまた不死身スキルのせいで無限に殺されるなんてことになったら堪らないから、俺は確認なんてしないでスキルを使った。
これが正確にどういうスキルなのかは分からないけど、名前からして今絶対に使った方がいいスキルだと思ったから。
その瞬間、感覚的にではあるけど、ゼツの頭辺りが弱点になったことを理解出来た。
このことを小狐にすぐにでも伝えて小狐にも頭を狙って欲しくはあるが、残念ながら俺は意思疎通ができない。
今まで通り小狐には好きに動いてもらって俺が弱点に向かって攻撃するか。
(透明化)
さっきの炎が効いたのかゼツの意識は小狐に向いている。
それを確認した俺は透明化スキルを使い、隠密スキルも使った。
「ガァァァァァァ」
「キュゥゥ!?」
その瞬間、ゼツが咆哮を上げた。
またブレスか? と思っていると、今度は今俺たちがいる空間全てが一瞬のうちに炎に包まれた。
……熱い。熱い、が、今はもうそれだけだ。
何故か体が溶けることも無く、俺は進み続けることが出来た。
……なんでだ? 痛みが軽減されてるのは痛み耐性のせいだと理解できるが、体が溶けなくなったのは……もしかしてだけど、適応スキルの影響か? ゼツが出す炎に俺が適応したってことなのか。
仮にそうなんだとしたら好都合だ。
この炎の中で小狐がどうなっているかは少し気になるが、別に仲間って訳じゃないんだ。
気にせずに俺はゼツからスキルを奪うためにゼツを倒すことだけを考えよう。
どうせ小狐がこの炎の中で生きてたってゼツを倒さないことには俺たちは生きてこの洞窟を出られないんだ。
仮に小狐が仲間だったとしても、これが正解のはずだ。
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