第27話
(超音波!)
まだギリギリ不意打ちスキルが発動するかなと思い、俺は超音波を放った。
その瞬間、ゼツの目や口や鼻、そして耳から血が流れ始めた。
ゼツは反射的に顔に触れ、血を確認し目を丸くしていた。
「驚いたな。血を流したのなんて、何百年ぶりだろう」
血を流してるんだから、効いてないってことは無いんだろうが、全く痛みを感じているように見えない。
……そもそも、何百年ぶりってなんだよ。少なくとも百年生きたことは確定かよ。
まぁ、やることは変わらない。
俺は奪うだけだ。
「それも、歓迎してあげようと思っていた相手にこんなことをされるなんて、本当にショックだよ」
ゼツのそんな言葉と同時に圧が更に強くなった。
チラリと小狐の方に目を向けると、相変わらず怯えている様子は見られなかった。
本当にこいつは何者なんだよ。肝が据わりすぎだろ。
いや、今は小狐なんかよりも目の前のとんでもない圧を放っているゼツ──
(ッ!?)
「キューっ!?」
目の前でとんでもない圧を放っているゼツの方が大事だ。
そう頭の中で思おうとした瞬間、何が起きたのかも理解出来ずに俺の体はまるで液体のようにぐちゃぐちゃにされながら吹き飛ばされた。
痛い。……痛いけど、思考ができなくなるほどでは無い。
多分、痛み耐性スキルのおかげだ。
そしてこんな状況でも俺が死んでないのはついさっきゼツから奪ったばかりの不死身スキルのおかげだろう。
今は再生してきてるとはいえ、流石に一度あれだけぐちゃぐちゃになったんだ。不死身スキルが無ければ本当に死んでと思う。
「やっぱり、それ、僕のスキルだよね? どうやったのかは分からないけど、返してくれるかな?」
「キュー!」
ゼツの言葉を喋れない俺の代わりに否定するように小狐が鳴き声を上げ、俺の仕返しとばかりに小狐のよく分からない力で今度はゼツの方が洞窟の壁に吹き飛ばされていた。ぐちゃぐちゃにはならなかったけど、衝撃でかなり血を流しているみたいだ。
……これは、勝てるんじゃないのか?
「……君の方もか」
まだゼツは冷静そうだが、見た目だけを見たらかなり満身創痍のはずだ。
「まさか、スライムや九尾とはいえまだ子供の九尾にここまでのことをされるなんてね」
ゼツの言葉と共に、小狐は何かを感じたのか、後ろに向かって飛び退いていた。
「人化解除」
その瞬間、ゼツがそう呟いたかと思うと、ゼツの体から煙が出てきだして、段々と人の姿から地竜なんかとは比べ物にならない程の大きさのドラゴン? になった。
……迫力が段違いなんだが、この洞窟でそんな姿になって大丈夫なのか?
(毒生成! ウォーターボール!)
そう思いつつも、わざわざ相手の人化が完全に解けるのを待つ必要も無いから、俺は毒を飛ばした。
「キュー!」
すると、俺が作り出した毒を喰らわないギリギリのところで小狐はゼツに対抗するように小狐自身も人化をしていた。
「ガァァァァァ」
ゼツが咆哮を上げた。
そこに俺の毒に苦しんでいる様子は無かった。
毒に耐性はあるってことか。
俺がそう思った瞬間、ゼツは口から炎……ブレスを吐いてきた。
小狐は人化したこともあって上手く避けれていたが、俺は普通に焼かれることになった。
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