第25話
俺が逃げ出してしまったあの場所に戻ってきた。
……圧はある。圧は感じる。でも、あの時ほどじゃない。
あの時はもしも俺が人間のままだったら息ができなくなるほどの圧を感じていただろうけど、今はそこまでじゃない。それくらいの違いがある。
勝てる。勝てるぞ。と思いながら、俺はそう感じていても小狐がどうかは分からないから、俺は小狐の方に視線を向けた。
「キュー?」
何故か見ることはできるけど、俺に目は無いはずなのに小狐は視線を向けられたことに気がついたのか、首を傾げながらそんな鳴き声を上げてきた。
……こいつ、何も感じないのか? この圧だぞ? 強くなってかなりマシになったとはいえ、圧を感じないわけじゃないのに、なんでこいつはこんなに平気そうなんだ?
俺と違って小狐は呼吸を必要としている生物のはずだろう? 息ができなくなるほどとは言わないけど、息苦しくなったりしないのか?
小狐が弱くないのは知ってるけど、この圧を全く感じなくなるほど強いとは思えないんだが。
……まぁいいか。
逃げることも想定してたし、逃げないなら逃げないで貴重な戦力が逃げなくてよかったと深く考えないようにしよう。
そう思い、俺にとって未知の領域へ向かって更に足を進めた。
歩くこと多分数分。
気持ちが悪いほどに何も出てこない。
まぁ、原因は分かり切ってる。どう考えても、この圧だ。近づく程に強くなってきてる気がするし。
こんなのに近づきたいだなんて、普通思わないよな。ましてや喧嘩を売ろうだなんて、ありえないと思う。
だと言うのに、小狐にはまだ怯えた様子が見えなかった。
……俺も大概だと思うけど、小狐も小狐でかなり頭がおかしいんじゃないか? ……俺としてはありがたいし、別にいいんだけどさ。
そして、そんなことを思いつつも進み続けていると
とうとう大きな門? のようなものが見えてきた。
……ゲームとかだと確実に強大なボスがいるような見た目だ。
……ここはゲームの世界じゃないけど、居るんだろうな。この先に、強大なボス……敵が。
「キュー!」
覚悟はとっくの前に決めてあるがそれでも緊張を隠せずにいると、後ろから小狐のそんな鳴き声が聞こえてくると同時に、小狐が何か目の前の門に向かって攻撃? をしていたみたいで、門が壊れ始めた。
……マジかよ。
確かに、緊張はしつつも俺たちの体的にどうやって開けようかな、みたいなことは考えてたぞ? でもさ、いきなりすぎないか? 普通、もうちょっと何かあるだろ。
「珍しいお客さんかと思えば、随分と乱暴なお客さんだね」
俺が小狐に対して内心で色々と思っていると、今まで感じていた圧と共にそんな声が聞こえてきた。
その瞬間、本能的なものなのか、時が止まったような気がした。
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