第18話

(強奪)


【種族名九尾からスキルを強奪することに失敗しました】


(強奪)


【種族名九尾からスキルを強奪することに失敗しました】


(強奪)


【種族名九尾からスキルを強奪することに失敗しました】


 さっきまで子狐だったはずの美少女に抱き抱えられながら、俺は何度も何度も強奪スキルを発動していた。

 ただ、結果は見ての通りで全て失敗していた。


 クソっ。

 最初に失敗した時はこいつがどんなスキルを持っていようが奪えないものは奪えないで仕方ない、と割り切るつもりだったのに、正式な名前があっているかは分からないが、どう見てもこれは人化スキルって奴だろ。欲しい。何がなんでも、欲しい。


「キュー?」


 俺のそんな内心の思いを知ってか知らずか、見た目が変わっても子狐は相変わらず首を傾げながらそんな鳴き声を上げていた。

 ……てか、狐耳が生えてるとはいえ、人の姿になっても人の言葉は喋れないのか? 仮にそうだとしても、やっぱり欲しいスキルだよな。

 あのスキルさえあれば、仮に喋れなくたって人間の街にだって入れるだろうし、この世界の情報だって仕入れやすいだろうにな。


「キューっ! キューっ!」


 そう思っていると、俺を恩人だと勘違いしている子狐……美少女? は抱き抱えてる俺の小さい体を抱きしめてきた。

 痛……くは無いけど、潰れる潰れる。俺の体が潰れるって。

 ……やめて欲しくても俺には口が無いから、喋れないし。


 取り敢えず、俺はできる限り離してもらえるように子狐だった美少女の腕の中で暴れてみた。

 すると、俺の思いが伝わったのか、ちゃんと離してくれた。

 ……さて、離してもらったはいいものの、どうしようかな。

 スキルさえ奪えれば話が早かったんだけどな。


「キュー」


 ……多分だけど、俺について行くって行ってるのかな。

 だとしたら、正直好都合ではあるか。

 今は奪えないんだとしても、いつかは必ず奪えるようになるだろうし。

 一応、俺の思惑がバレて敵対してくる可能性も考えると、当然デメリットはあるんだけど、それを分かった上で人化のスキルは欲しい。


「キュー!」


 そう思って、俺は先に進むために歩き出した。

 すると、予想通り、子狐だった美少女……いや、もう子狐でいいや。子狐は俺に付いてきていた。

 ……はぁ。こいつからスキルが奪えるようになるまでは一緒に行動するしかないか。

 

 


 そうして、子狐と少し歩いたところで俺は思った。

 そういえば、こいつ、戦えるのか? 

 ……まぁいいか。仮に戦えなかったとしても、俺が守ってやればいい。

 ……ん? 守る……? 俺が? 


「キューっ!」


 何か疑問が俺の中で湧いてくる、といったところで、子狐のそんな警戒? するような鳴き声と共に前方から熊が現れた。

 何の変哲もない、俺のいた前世の世界にもいたような熊だ。

 まぁ、少し体は大きいかな、とは思うけど、それ以外は普通だ。


「キューっ!」


 ……これも魔物じゃなく動物っぽいなぁ、と思いつつ、俺が超音波を放とうとした瞬間、子狐が手をかざしながら鳴き声を上げたかと思うと、熊はその場に倒れ込んだ。

 ……え、何それ。それも何か子狐の持っているスキルのか? ……だとしたら、それも欲しいんだけど。


「キュー……」


 更にスキルを奪いたくなったな、と思っていると、子狐はその場に座り込むようにして、美少女の姿から子狐の姿に戻ってしまった。

 ……? 時間制限があったってことか?

 よく分からないが、やっぱり欲しいよな。

 さっさと強くなって、奪えるようになろう。

 ……多分、強くなったらスキルを奪えるようになるだろう。……多分。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る