第14話
こいつは流石に何か良いスキルを持ってそうだな。
目の前の大きなトカゲに向かってそう思った瞬間、俺の体からスキルを奪おうとしている欲か殺気でも漏れ出たのか、隠密スキルを発動しているはずの俺のいる方向をギロリと地中から出てきたばかりのトカゲは鋭い視線で睨んできた。
(ッ)
……凄い圧だな。
ただ、残念だったな。
俺はあの洞窟でそれ以上の圧を感じ取ってるんだよ。
あの洞窟の奥にいる存在を知らなかったら危なかったかもしれないが、幸いにも俺はあれを知っているんだ。
俺はそんな洞窟の奥にいる存在からスキルを奪おうとしてるんだぞ? この程度でビビってなんていられないし、そもそも、なんともない。
だって、今の俺はお前の圧による恐怖なんかよりも、お前のスキルを奪いたいって欲の方が強いんだからな。
「グモぉぉぉぉぉぉっ!」
俺のそんな内心を読み取ってしまったのか、トカゲの見た目からは少し想像のしにくい咆哮をあげて、俺の方に四足歩行で走ってきた。
やっぱり、俺の隠密スキルはコイツには効果が無いみたいだな。
(俊敏! 超音波!)
不意打ちスキルの効果が乗らないことは残念だけど、俺は俊敏スキルであの巨体に踏み潰されないように距離を取りながら、いつも通り超音波を放ったのだが、トカゲは俺の超音波に全く堪えた様子無く、そのまま俺に向かってきている足を止めることは無かった。
一発じゃ相手が何ともないのは想定内だ。
あの巨体だからな。俺とは違って明らかに防御力が高そうな見た目だし。
だからこそ、一撃目の超音波が効いてない様子のトカゲに動揺することなく、俺はまたいつも通り、トカゲに向かって何度も超音波を発動した。
ただ、トカゲはそれでも全く堪えた様子が無く、いくら俊敏スキルを発動しているとはいえ、超音波を打つ時は俺自身が止まらなければならない以上、もうトカゲは俺の目と鼻の先まで近づいてきていた。
……ちょっと、やばいな。俺、目と鼻なんて無いけど、なんて冗談を内心で思ってる場合じゃないぞ。
一撃目が効かないのは割と想定内だったけど、超音波を連続しても効かないのはちょっと予想外だ。
今まで出会ってきた魔物はそれで倒されてくれたからな。
そんなことを思いつつも、本当に危ない状況だから、俊敏スキルを使って、踏み潰されないように危機一髪のところで俺はトカゲの足をぴょんっ、とジャンプをして避けた。
そして、攻撃を避けた俺は思った。
……こいつ、もしかしてだけど、今の感じを見る限り、踏み潰したり体当たりをするしか攻撃方法が無いのか? 大きさが脅威ってだけでこのトカゲ、案外弱いのか?
そう思い始めたところで、トカゲはまるで俺の考察を嘲笑うかのようにまた咆哮を上げたかと思うと、さっきとは比べ物にならないレベルで地面が揺れ始めた。
それと同時に、揺れに耐えられなかったみたいで周りの木も倒れだし、木に止まっていたであろう鳥が一斉に空に羽ばたいていった。
って、鳥を見てる場合じゃねぇよ! マジでこれはヤバイ! 俺の体じゃあ倒れ込んだ木を飛び越えるだけで一苦労だし、そんなことをしてるうちにトカゲがさっきみたいに俺に走ってきて、踏み潰されてしまうだろう。
あれから逃げられる気なんてしないし、どうする? どうしたらいい? 俺の今持っているスキルで何かあいつに効きそうなやつはなんだ?
俺を舐めてるのか、逃げられない状況の俺に全く向かって来る気配は無いし、早く今持ってるスキルであいつに効きそうなものを考えよう。
ファイヤーボール……はあれに効く気がしないし、今、下手にファイヤーボールを打ったりして、せっかくあいつは俺を舐めてくれているのに、それで怒って俺に向かってきたりなんかしたら目も当てられない。
ファイヤーボールを使うとしても、せめて他の全てのスキルが効かなかった時だけだ。……レベルもまだ7だし、連射も出来ないからな。
ウォーターボールも同じ理由でまだダメだって。あれはファイヤーボールより高いとはいえ、レベル8だし。
……どうしような。もう俺に攻撃スキルなんて残ってないぞ。打撃攻撃なんてこの体じゃあ出来ないし。
一応、毒生成スキルなんてものもあるけど、木のせいでトカゲの攻撃を避けられない以上、時間をかける訳にはいかないんだよ。
そんなことを思っているうちに、トカゲはそろそろ終わらせる気なのか、動き出した。
ヤバイ……もう俺の作る毒に即効性がある可能性に賭けて毒生成スキルを使うしかないのか? ……即効性が無くても、デバフにでも掛かってくれれば御の字か。
仮にデバフにでも掛かってくれれば、その間に無理やりにでも強奪スキルを発動して、スキルを奪ってしまえばいい。
どうせ絶体絶命なんだ。やるしかない。
こんなところで俺は負ける訳にはいかないんだ。
(毒生成!)
そうして、俺はスキルを発動させた。
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