第7話

 足音が俺が隠れている岩陰の少し前の方から聞こえてくる。

 俺はもしも見つかりそうになったら直ぐに超音波を使えるように、気を張っていた。

 

「頷いておいてなんですが、本当にあれ以上先へは進まなくても良かったのですか?」


「どち道俺たちの実力じゃあ、あれ以上先になんて進めねぇよ。もしも依頼人がこれ以上の調査を望むのなら、俺たちよりもランクが上の奴に依頼を出せばいいだけの話だ」


「そうでしょうか? 私にはまだ先へ進めるように感じられましたが」


「……ダメだな。勘でしかないが、あれ以上は絶対にダメだ」


 足音ともに声もだんだん遠くなっていき、さっきまでと同じく静かな空間がそこには広がっていた。

 ……どうやら見つかることは無かったみたいだな。

 結局見つかる訳にはいかないと岩陰から顔をのぞかせることすらしなかったから、さっきの声の持ち主が人間だったのかも分からないけど、まだ人を殺すのは少しハードルが高い……と思うから、本当に見つからなくてよかったよ。


 ……それよりも、調査で来ていた、か。

 さっきのあいつらの話を聞く限り、また誰かが調査に送られてくる可能性があるってことだよな。

 ……先に進むのなら、早めの方がいいか。

 さっきはたまたま声が聞こえたから隠れることが出来たけど、鉢合わせになっていた可能性も全然あったもんな。

 

 


 さっきの人間? 達が戻ってきたばかりだからか、特に何か魔物と遭遇することなく、結構な距離を先へ進むことが出来た。

 そして、理解した。

 さっきの男があれ以上進むのは絶対にダメだと言っていた理由……それは、この気配のことだったんだ、と。

 

 何かが俺の目の前にいる訳では無い。

 ただ、これ以上先に進めば、この気配の持ち主と鉢合わせることになる。

 もしもそうなれば、俺は何かをする暇すら与えられずに、この世から消される、ということを何故か直感的に理解出来た。

 それと同時に、もしもこの気配の持ち主のスキルを奪うことが出来たら俺はどれだけ強くなることが出来るのだろう、という絶対に考えるべきじゃない頭のおかしな考えが俺の中には浮かんでしまった。


 当然、今は絶対に無理だ。

 ただ、いつか必ず、奪ってやる。


 俺はそんな決意と共に、来た道を引き返した。

 何となくだが、あの気配の持ち主はあの先の空間から動くことは無いと思う。

 だからこそ、まずはこの辺の魔物からスキルを奪って、自分自身のレベルも上げよう。

 今の俺が弱いからこれ程までに気配が強力に感じるのか、それとも単純に強すぎるからこそのこの感覚なのかは分からないが、仮にレベルを上げてもスキルを奪うことすら難しいと感じた場合は、一度洞窟を出てからでも、絶対に戻ってきてやる。

 

 命を少しでも大事だと思うのなら絶対に挑むべき相手じゃないことくらい簡単に分かるのに、俺の決意は固くなるばかりだった。

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