第2話
目の前で虫の息になっているコウモリをレベル上げの為に殺す。
そう決意して、コウモリの元まで歩き出そうと思ったまではいいんだが、これ、どうやって歩くんだ?
そう思いつつも、前へ進もうと人間だった頃の感覚で歩こうとすると、不思議と普通に前へ進むことが出来た。
歩いている、というより、滑っている? みたいな感じだけど、進むことが出来たんだから、なんでもいい。
そうして、コウモリの元まで近づいたのだが、これ、どうやって殺せばいいんだ?
俺、腕とか無いし。
あっ、そういえば、さっき超音波? みたいなスキルを強奪した、みたいなことを言ってたよな。
それを使ってみるか。
超音波っていうと、イメージ的に音で攻撃? みたいな感じだもんな。
こいつはもう虫の息だし、仮に威力が弱かったとしても、殺せるだろう。
……あれ? もう一つ問題が生まれたぞ? 俺、口が無くて、喋れないのに、どうやって超音波なんて使うんだ?
まぁ、使ってみて損は無いだろうし、使ってみるか。
多分、心の中で願えばいいんだよな。さっきの強奪みたいに。
【超音波】
そう思って、超音波を使う! と心の中で強く願った結果、急に俺の体がぷるぷると震え出したかと思うと、目の前のコウモリは完全に動かなくなった。
……上手く超音波スキルを使えたってことでいいのか? ……今更なんだけど、超音波って音を相手に聞かせてダメージを与えるわけじゃないのか? 俺、さっき聴覚を奪ってたよな? なんで倒せたんだ?
【レベルが上がりました】
そんな疑問を頭の中に思い浮かべていると、また頭の中で声が鳴り響いた。
おぉ! ちゃんとレベルの概念がある世界だ!
もう超音波でコウモリを倒せた理由なんてどうでもいいや。
次に確認すべきことは、ステータスを見れるのか、だな。
(ステータス)
頭の中で強くステータスをみたいと願った。
レベル:3
名前:無し
種族:スライム
スキル:超音波、暗視
ユニークスキル:強奪
称号:転生者
すると、こんな感じの内容の情報が頭の中に出てきた。
あれだな。色々と情報は出てきたし、俺がスライムだってことはこれのおかげで確定したんだけど、これだけなんだな。
魔力……があるのかは分からないけど、魔力だったりの数値は出たりしないんだな。
まぁいいか。これだけでも見られるだけで十分だ。
取り敢えず、俺には攻撃手段があることも分かったし、移動するか。
いつまでもここにいるだけじゃあ何も進まないからな。
……と言っても、どっちに進んだものか。
前か、後ろか。
……こんな状況でも前向きに生きていく、ってことで前に進むか。
そうして、コウモリの亡骸をその場に放置して前に進み出すと、さっそくと言うべきか、小さな……なんて言葉は今の俺の姿じゃあ言えないな。
俺の3倍か4倍くらいある緑の棍棒を持った魔物……凄くゴブリンって名前がしっくりくるような魔物が現れた。
ただ、別に俺を襲ってくるような様子は見られない。
同じ魔物だから、仲間だと思われてるとかか? ……仮にそうだとしたら、少し悪いとは思うけど、有難く奪わせてもらおう。
あのゴブリンは知らないけど、少なくとも俺はゴブリンに仲間意識なんてないからな。
攻撃してこないのなら好都合だと思って、一体しかいないゴブリンに向かって俺は歩き出した。……足は無いけど。
【スキルを確認致しました。強奪しますか?】
そして、ゴブリンの足に俺の体が当たると同時に、少し前に初めて頭の中に響いた声と全く同じ音程、声色でまた頭の中に声が響いた。
(強奪する)
そのために近づいたんだからな。
【種族名ゴブリンから嗅覚を強奪。スキル、嗅覚強化、不意打ちを強奪に成功しました】
強奪に成功したことを確認した俺は、直ぐにそのゴブリンから離れようとしたのだが、ゴブリンは自分がスキルと嗅覚を奪われたことにも気がついていないのか、さっきまでと同じく俺と敵対する様子は見られなかった。
これ、今攻撃をしたら、さっそく奪ったスキルの不意打ちを使えるんじゃないか?
全然目の前にいるけど、このゴブリンは全く俺を警戒していないし、絶対不意打ちになるだろ。
(超音波)
そう思って、俺は今持っている唯一の攻撃スキル、超音波を使った。
「グギャ!?」
さっきと同じように体がぷるぷるとしだしたかと思うと、ゴブリンは悲鳴を上げ、俺の事を敵と認識したような目で見てきたと同時に、その場に倒れ込んだ。
そして、直ぐに動かなくなった。
【レベルが上がりました】
よし。ちゃんと倒せたな。
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