第3話
ゴブリンを倒したことだし、さっき奪った嗅覚強化というスキルを試してみようと思って、実際に試してみたのだが、特に何かが変わることは無かった。
そもそもの話、よく考えてみたら、嗅覚を奪ったという声が聞こえてきたはいいものの、未だになんの匂いもしないことに俺は気がついた。
この洞窟がたまたま無味無臭……なんてことは無いだろう。
仮に洞窟になんの匂いも無いんだとしても、目の前に転がっているゴブリンが何の臭いもしないとは思えないからだ。
……なんでだ? 体がスライムだからか? ……いや、でも、少なくとも最初に出会ったコウモリからは視力を奪えているし、それは考えずらいな。
確かに俺はスライムだし、鼻なんてものは無い。
ただ、それを言ったら、目や耳だって無いんだ。どう考えても、おかしいだろう。
……んー、まぁ、少なくとも今深く考える必要は無いか。
将来的には分からないけど、今この場ではそこまで嗅覚が大事だとは思えないし、どうせ考えたって分からないんだからな。
頭の中で無理やりにでもそう結論づけて、俺はまた進み出した。
もちろん、ゴブリンの亡骸はそこに放置したままでだ。
そうして進んでいると、今度は剣と盾を片手ずつに持った明らかにスケルトンって感じの骸骨が現れた。
見た目は違うけど、同じ魔物同士ではあるし、さっきのゴブリンみたいに仲間意識でも覚えてくれるのかと思ったけど、全然そんなことはなく、俺のことを認識してくるなり、俺の方に向かって走り出してきた。
これじゃあ確実に不意打ちのスキル効果は発動しない。
逃げるか? ……いや、無理だ。俺の体じゃあ骨なこと以外人間と変わらない大きさの相手からは逃げられない。
(超音波!)
逃げられないことを察した俺は、早速とばかりに超音波を使った。
俺が持っている唯一の攻撃スキルだ。
スケルトンはカタカタと音を立て、一瞬怯んだような様子を見せはしたけど、俺の方に走ってきている歩みを止めることは無かった。
クソっ。
不意打ちスキルの効果が乗ってないからか、さっきのゴブリンみたいに一撃では倒せなかったか。
(超音波!)
一撃では倒せなかったけど、効いていないわけではないみたいだったし、俺はもう一度超音波を発動してスケルトンを倒そうとしたんだが、今度は超音波が発動することが無かった。
(ッ)
このスキル、クールタイムがあるのか!?
ヤバいっ。
先に検証しておかなかった自分に苛立ちつつも、目の前まで迫ってきていたスケルトンから振り下ろされる剣をなんとか横にピョンッ、と飛び、体を転がしながらなんとか攻撃を避けた。
(超音波!)
そして、今度こそともう一度超音波を発動しようとするが、また発動することは無かった。
クソっ! いつになったらクールタイムが終わるんだよ!
……多分だが、強奪は相手に触れなきゃ発動できないし、今の状態であいつに触れられるとは思えない。
どうする? 次に発動できる超音波で倒せる保証は無いし、ここで賭けに出るか?
(骸骨のくせにふざけやがって! さっさと発動しろよ! 超音波!)
これで発動しなかったら、賭けに出るしかない。
そんな思いで、超音波を使おうとすると、クールタイムが終わったのか、超音波を発動することに成功した。
スケルトンは盾を落とし、その場に膝を着いているが、まだ生きている? って表現があっているのかは分からないが、生きている。
それを確認した俺は、今しかチャンスが無いと思って、スケルトンがまだ持っている剣には気をつけながら、スケルトンに向かって思いっきり体当たりをした。
(強奪!)
【種族名スケルトンからスキル、打撃攻撃耐性(小)を強奪に成功しました】
いつもの声が頭の中に響き渡ると同時に、スケルトンの体は崩れ落ちていった。
良かった……あの体当たりでダメだったら、本当にもう終わりだったかもしれない。
転生して多分一日も経ってないのに死ぬなんてことにならずに本当に良かった。
……ただ、これからどうしような。
先に進まなくちゃならないのは当然なんだが、超音波にクールタイムがあると分かってしまった以上、どうしても先に進むのに抵抗が出てしまう。
俺が今生きているのは完全に運が良かったとしか言いようがない。
もしもさっきのスケルトンが二体現れていたのなら、クールタイムがある超音波一つでは勝てなかっただろう。
……他の攻撃スキルが欲しいところだが、それを奪うにはまた何かと戦わなくちゃならないかもだし、どうしたものか。
……今更なんだが、また、スキル超音波を持っている相手からそれを強奪した場合ってのはどうなるんだろうな。
どち道これ以上先に進むのは怖いし、少し戻るか。
もしかしたら、さっきのコウモリがまた現れて、超音波を奪えるかもしれないからな。
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