スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う
シャルねる
第1話
……なんだ? 暗い……? いや、違うな。目を開けられない……と言うより、目が無い? は!? 目が無い!? いやいや、そんなわけが無いだろう。自分で思ったことではあるけど、何を馬鹿なことを考えてるんだ、俺は。
……馬鹿なことのはずなのに、やっぱり目は開けられない。
俺は自分で目がどうなっているのかを確認しようと、恐る恐る手で確かめようとしたのだが、肝心のその手の感覚までもが無かった。
一気に俺を恐怖心が襲うが、冷や汗すら出てきていないことが感覚的に理解出来た。
……情けないことに恐怖心から泣きそうになるけど、その涙すら出てこない。
そうして、俺が絶望を感じていると、何かが俺の体に当たった。……いや、正確には何故か感覚的に当たったような気がした、だ。
もしかしてだが、俺は何か事故にあっていて、病院にいるのか? 正直、こんなこと想像もしたくないんだが、四肢を失う程の事故だったのか? そうだとしたら、今の状況にも納得はできる。
何かが俺に当たった気がしたのは看護師の方か誰かなんだろう。
「……」
そんな考えに思い至った俺は、看護師の方にこの状況を聞こうとしたのだが、声が出ることは無かった。
更なる恐怖が俺を襲う。
俺は今、一体どうなってるんだ? ……耳が聞こえなくなっているのか、声が出せないだけなのか、そのどちらもなのか。
【スキルを確認致しました。強奪しますか?】
そう思っていると、そんな声? が聞こえてきた。……いや、違う。これは……頭の中に響いてきた? って感じだ。
どういうことだ? 俺は病院にいるわけじゃなく、実は何か実験体にでもされているのか?
分からない。どれだけ考えても、ただ恐怖心が増長されていくだけで、答えが出ることなんてない。
だったら、もうやけくそだ!
(強奪する!)
【種族名バットから視力、聴覚を強奪。スキル、超音波、暗視を強奪に成功しました】
そう心の中で答えた瞬間、また頭の中で声が響き渡った瞬間、さっきまで何も見えていなかった俺の視界がクリアになった。
……ここは、洞窟? 俺、なんでこんなところに……いや、そもそも、さっき俺の体に当たっていた何かは何だ? 強奪ってくらいだから、俺はそいつから何かを奪ったんじゃないのか?
直ぐに俺が奪った? でいいのかはまだよく分からないけど、奪った対象であろうものは見つかった。
なぜなら、さっき頭の中に響いた声を聞く限り、俺はそいつから視覚を奪っている。
つまり、そいつは今、何も見えない状態のはずだ。
……明らかに、この目の前で何度もどこかへ飛ぼうとして洞窟の壁に体をぶつけているコウモリが対象だったんだろう。
こうやって壁にぶつかっている理由は、俺が視覚を奪ったから、何も見えずに困惑しているってことだと思う。
……まだこの状況は全然理解出来てないけど、夢……なんて現実逃避をするより、これは夢じゃない、と考えた方がいいだろう。
もし仮にこの状況が夢だったんだとしたら、どうせいつかは目覚めるし、目覚めた時にこの状況が夢だったことを喜べばいい。
そう考えて、今度は視線を下の方に向けて、俺の体がどうなっているのかを見ることにした。
未だに腕を動かせる気がしないんだから、怖いけど、見るしかないんだ。
(は!?)
見えたのは俺の体……ではなく、ぷるぷる? としたゲームで言う青いスライムのようなものだった。
もう一度前を見る。
よくよく考えてみれば、視線が明らかに低い。
……この青いの、俺の体、なのか? ……嘘だろ? 俺、スライムになったのか? いや、さっきのがまだスライムとは限らないし、違う可能性もあるんだけど、少なくとも、人間じゃ無くなったのか?
分からない……なんてのは現実逃避だな。
認めよう。なんでかは分からないが、俺は人間じゃなくなり、魔物? になったんだ。
人間だった頃に未練がないのか? と言われるとめちゃくちゃあるけど、切り替えなくちゃならない。
取り敢えず、壁にぶつかりすぎて目の前でもう飛ぶことすら出来なくなっているコウモリに目を向けた。
考えるまでもなく、こんなこと、日本じゃ有り得ない。
だからこそ、ここは多分……というか、確実に異世界ってやつなんだろう。
異世界といえば、レベルだ。
あのコウモリはもう虫の息。
殺そうと思えば簡単に殺せるだろうし、殺そう。そして、経験値をゲットしよう。
……レベルの概念がある世界なのかは分からないけどな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます