第20話 頑張れ若宮君

2セット目に入り、矢田高からのサーブで始まる。

柚羽がオーバーで上げ、唐田がトスを上げる。

速攻でキャプテン深瀬が打ち込む。


「おい!拾えよ!」

「はあ!?お前のブロックが悪すぎだろ!」


矢田高は、イラつきだした。


「矢田高、相変わらずですね~。」


令実は佐々木先生の隣で、呆れる。

佐々木先生は、次の試合の事を考えていた。

体育館に、次のチームが入ってくる。

鈴木颯也 2年生。178センチ 。

勝てば次に対戦する愛静アイセイ高校のエースだ。


「藍田くん、久しぶりだなぁ。早くやりたい。」


くっきり二重のパッチリな瞳をキラキラ輝かせながら鈴木は言った。


24−3。


岡北のマッチポイントになった。


「安、緊張する事ねーぞ。入れたら勝てる。」


サーブを打つ安に、柚羽は声をかける。


「わかりました。」


安はボールを高く上げ、助走をつけ、思いっきりボールを叩く。


ザシュ!!


ボールは勢いよく、ネットに引っかかった。


――え!?


「え?」

「え?」


安は申し訳なさそうにコートに戻る。


「え?安君て、もしかして・・・」


令実は呟く。


「プレッシャーに弱いのか?」


唐田と柚羽は口を揃えて言った。


「さあ、次決めるぞ!」


キャプテンの声で全員構える。


「おい、若宮!偉そうな事ばっか言ってんだ!サーブ入れろよ!」

「あたり前だ!いちいちうるせえ!」


若宮はそう言いながら緊張した。


「ちゃんと入れろよ若宮、オレが決めて終わらせてやる。」


柚羽は呟く。


若宮はボールを高く上げ、サーブを打った。


「決めてやるぜ!」


若宮は思いっきり打った。


ザシュ!!!


ボールはネットに引っかかった。


ピーッッ!!


試合終了のホイッスルが鳴る。


若宮は、口を大きく開け、青ざめた。

柚羽は、そんな顔を見て、思わず吹き出した。


「おい、ゆず、笑うのはダメだぞ。」


唐田は注意する。


「笑えるだろ。あの顔。」


柚羽は笑いながら並んだ。

うつむく若宮をチームメイトが肩を叩く。


「ふっ、うっ。」


若宮はこらえきれず涙をながした。

体育館の外で、タオルで顔を覆い、大泣きする若宮に、令実は黙って近づく。


「これが最後じゃないでしょ。あんたの負けず嫌い、生かしなよ。」


若宮は、真っ赤になった目で令実を見る。

令実は黙って、通り過ぎた。

若宮は、そんな令実の後ろ姿をずっと見ていた。

体育館から出ようとした柚羽は、愛静高校の鈴木に声を掛けられる。


「おつかれ。藍田君。」

「おう。」

「若宮は相変わらずだね。口だけなら優勝だよ。」

「最初っから相手にしてないから大丈夫だよ。」


鈴木はニッコリと笑う。


「今からだろ?」

「うん。」

「当たるのを楽しみにしてるよ。」

「僕も。」


お互いに微笑むと、鈴木はコートに向かった。


◇◇◇◇◇◇


女子の会場では2回戦が始まろうとしていた。

両サイドには岡北、南高校の選手が並ぶ。

加藤は緊張した面持ちで、南のエース、今泉を見る。

同じく今泉も、加藤を気にしているようだった。

愛那はベンチの後ろに立ち、少しドキドキしながら試合開始を待った。

試合開始のホイッスルが鳴り、6人はコートの真ん中で円陣を組む。


「気合い入れていくよ!」


加藤が言うと、全員が右手を中央に出す。


「岡北ー!!」

「ファイトー!!!」


全員が右手を挙げ、ハイタッチをする。


「頑張れー!!」

「ファイトー!!」


愛那と紗代が声を出す。


ピーッッ!!


足立のサーブで試合が始まった。













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