第19話 初試合

足立のサーブで試合が始まる。

リベロが拾い、セッターに上がる。

レフトからの攻撃に、加藤がブロックで止める。


「イエーイ!!」


コート内の選手もベンチも声をあげて喜ぶ。


「久美子!もう一本ね!」

「足立先輩!ナイサーイッポン!」


足立は深呼吸をすると、狙いを定め、ジャンピングフローターを打つ。


バン!


コートのサイドラインギリギリに決まった。


再びコートに集まり喜ぶ。


――すごい!!先輩達!!頑張れ!!


愛那は初めて生で見る公式戦に、胸が弾んだ。


試合開始から40分ほどが経過し、岡北はストレート勝ちした。

選手達は体育館の外へ出る。


「集まって。」


加藤が集合をかける。


「1試合あいたら、次は南とだから。

かなり攻撃が早いから、ブロック頑張って。

1番の今泉が、レシーバーをよく見て打ってくるから、みんなしっかり動いて上げていこう。」

「はい!」

「久美子、ばんぱんトス上げてね。」

「了解!」


紗代は、加藤の顔を見る。


「なんか、加藤先輩、気合入ってるね。」

「あたり前でしょ。加藤先輩と南の今泉さん、同じ中学だったし、去年の新人戦、岡北はフルセットで負けてるから、絶対リベンジしたいんだと思う。」


知佳は答える。


「お前らの出番もあるかもしれんから、そのつもりでいろよ。」


愛那、知佳、紗代、侑里禾の後ろから、岡本先生が声を掛ける。


「出番、あるのかな。あたし達にも。」


紗代が嬉しそうに言う。


「みんな、頑張って!しっかり応援するから!」


愛那は3人に激を飛ばす。


頷く知佳、侑里禾。


◇◇◇◇◇


男子の試合会場。

選手達はウォーミングアップをしている。

柚羽や、唐田、安達も、それぞれアップをしていると、若宮と、チームメイトがやってきた。

ストレッチをしている柚羽の前で立ち止まる。

何も知らない安は、なんだ?という感じで若宮を見た。


「ほっとけ。ゆず。」


唐田は、若宮をチラッと見ながら、柚羽をなだめる。


「おはよう。イケメンエースの藍田君。」


ちっ。


柚羽は舌打ちをする。


「舌打ちとか、よくないと思うよ。スポーツマンが。それもイケメンの。」

「なんすか?この人。」


安がストレッチをしながら柚羽を見る。


「うちは去年とは訳がちがう。今年は、うちがお前らを1桁で抑えるから、覚悟しとけよ。」


若宮は、みおろしながら言う。


「若宮君!うちの選手の邪魔しないでくれる!?」


令実が間に入と若宮の顔が赤くなった。


「あなただって、きちんとアップしないと!もう戻ってくれる?!」


令実にキツく言われ、若宮は、渋々柚羽達から離れた。


「あの可愛い子、誰だ?」


若宮は、一緒にいるチームメイトに聞く。


「マネージャーじゃないか?」

「マネージャー・・・」


「ほんっとにうざい男だぜ。さっさと勝っちまうぞ。」


柚羽はストレッチを終え、立ち上がる。



召集がかかり、各チームの選手達がコートに並ぶ。


「秒で終わらせるぞ。」


柚羽は若宮を睨みながら独り言を言う。

ホイッスルが鳴り、試合開始。

矢田高校からのサーブだ。

安がレシーブを上げると、セッター唐田がトスを上げる。


「ゆず!」


柚羽は高く飛ぶ。

若宮もブロックに飛ぶが、その遥か上から、スパイクを叩きつけた。


「クソッ!」


若宮は、柚羽を睨む。


「ブロックちゃんとしろよ。」


柚羽はニヤッと笑いながら嫌味を言う。

唐田のジャンピングサーブ。


「ぐわっ!」


矢田高のリベロの肩に強くあたり、大きくはじいた。

唐田はハイタッチをする。

再び唐田のジャンピングサーブ。

今度は、コート外に弾きながらも、なんとかカバーをし、チャンスボールで帰ってくる。


「オッケ!」


リベロの成宮が素早くボールの下に入り、唐田がトスを上げると同時にオポジットの村上が速攻に入る。


「ボン!!!」


ボールを打ちつける低い音。

矢田高のリベロは、反応する事ができない。


「ちっ!ちゃんと拾ってくださいよ!」


若宮は先輩リベロに悪態をつく。


「ブロックもちゃんとしろよ!」


リベロと若宮が睨み合う。

その光景を見ながら、柚羽は「バーカ」と口を動かす。

再び、唐田のジャンピングサーブ。

またもや、サービスエース。

柚羽達は、トントンと点数をとり、あっという間に1セットが終了した。


「次もこの調子でやればいい。」


佐々木先生は、とくに言う事もないというふうだった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る