第6話 初心者はお断り!?

「じゃあね、愛那、部活頑張ってね!」

「練習無い日に遊ぼうな!」

「うん!ありがとう!また明日ね!」


授業が終り、心捺こなつと、快杜かいとと別れて愛那は体育館に向かう。

バレー部に入部して初めての練習日。

愛那は緊張しながら体育館に入った。

女子コートの隣には男子コートが。

チラッと柚羽と目が合う。


――ヤバっ!


愛那はすぐに目をそらした。


「集合!」


キャプテンの声で、みんなが集まる。

向かい合うように1年生も並んだ。


「今日から新入部員も練習に参加するので、まず初めに簡単に自己紹介をお願いします。

まずは、あたしから、キャプテンの加藤ひかりです。よろしくお願いします。」


キャプテンが終わると、次はショートボブのキャプテンよりも小柄な、160センチ前後の子が挨拶する。


「副キャプテンの足立久美子です。よろしくお願いします。」


その後も順番に自己紹介が続き、1年生の番になった。


「じゃあ、一番右の、あなたからお願いします。」


キャプテンが言うと、160センチくらいのポニーテールのキツめの顔の子が挨拶をする。


「石川紗代です。小中とバレー部で、ポジションはセンターでした。よろしくお願いします。」


順番に自己紹介が続き、愛那の番になった。


「春川愛那です。バレーは未経験ですが、頑張りますので、よろしくお願いします!」


バレー未経験という言葉に、みんなは驚く。


「未経験なの?てっきりアタッカーかと思った。」


キャプテンと副キャプテンは言う。


「まあいいわ。背も高いし、一生懸命頑張れば試合にも出れるかもしれないから、頑張ってね。」

「はい!ありがとうございます!」


となりのコートでは男バレが集まっている。


「おい、女バレに可愛い子いるな。」

「いいなぁ。彼氏いるかな。俺がんばろうかな。」


1年生が愛那を見ながらニヤニヤしている。


バーン!!!


1年生2人の前をボールが打ち付けられる。


「うわっ!」

「なんだ!?」


目の前には、2人を睨みながら見おろす柚羽が立っている。


「おまえらは、女を見る為に入ったのか、バレーがやりたくて入ったのか、どっちだ!?」

「バ、バレーです!」

「バレーがやりたくて入りました!」


柚羽はフンッと睨みつける。

キャプテンの深瀬は、そんなやりとりに少し呆れる。

一番端に立つ背の高い男子が自己紹介をする。


アン 司です。よろしくお願いします。」


身長は柚羽と同じくらいの190センチ。

切れ長の目のクールな雰囲気の漂う。

安は、柚羽をじっと見る。

柚羽は、隣のコートで練習する愛那の事が気になって仕方なかった。


愛那は、2年の田中につきっきりで基礎から教えてもらう。


「まず、肩幅くらいに足を開いて、手はおでこの辺りで三角を作るようにして、上目遣いでボールを見て。」

「はい。上目遣い・・・」

「そう。そんな感じ。」


初心者の愛那は、他の生徒とは別で、体育館の隅で、ひたすら基礎を教わる。

その姿を遠目で見ながら、柚羽は心配だった。


「お疲れ様でした!」


挨拶をし、解散すると、柚羽は愛那のもとに行こうとするが、安に呼びとめられる。


「藍田先輩!」

「ん?えっと、名前・・・・。」

「安です。」

「ああ、安。どうした?」

「俺、先輩に憧れて、先輩と一緒にバレーやりたくて、岡北に来ました。よろしくお願いします。」


柚羽は、少し驚いた。


「はあ〜。疲れた。」


愛那は独り言を言いながらシューズを脱いだ。


「おつかれ。愛那ちゃん。」

「お疲れ様。紗代ちゃん、だっけ?」

「うん。これからよろしくね。」


紗代は笑顔で話しかけた。


「こちらこそ。よろしくね。」


愛那も笑顔で答える。


「高校デビューなんて、ありえない。さっさと辞めたら?」


愛那の隣でシューズを脱ぎならが、世良せら知佳ちかは言う。


「背が高いだけでバレーができると思ったら大間違いだから。」


知佳は面と向かって言うと、スタスタと歩いて行った。


「何あの子、入部早々感じわるっ!」


紗代は嫌な顔をする。


――なんだアイツ?ムカつくなぁ。


愛那は地味に負けず嫌いに火がついた。



 

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