第3話 指切りげんまん

「うん。うん。もう友達もできたから大丈夫。」

「そう。とりあえず楽しそうで良かったわ。」


愛那は自宅の部屋で母と電話で話す。


「あ!そうだ、それとね、いつもみたいにジョギングしてたら、カワイイ犬散歩してる人に会ってね、その犬が可愛すぎて、名前を聞いたの。

そしたら、その人、あたしの名前聞いてきて、ビックリしたけど、教えてあげたの。

同じくらいの男の子だったんだけど・・・イケメン・・・」

「なにやってるのアナタ!」


愛那がまだ話し終わる前に、母は話しを遮った。


「それって、ナンパじゃない!なんで名前教えちゃうのよ!」


母の一言に愛那は驚く。


「へっ?ナンパなの?」

「あなたは誰がどこから見ても可愛いんだから、もっと気をつけないと!!」


――ああ、もう聞き飽きた言葉。

ママは一体若い時、男にどんな目に合ったのかわかんないけど、本当に男関係になるとウルサイなぁ。


「はいはい。わかりました。きをつけますよ。じゃあ、そろそろ切るね。」


電話を切るとため息をついた。


――あの人、ちょっとカッコよかったな。

また会えるかな。


翌日、愛那は同じ時間に、同じコースを走る事にした。


――いるかな、いるかな。


ワクワクしながら走ると。


――あ!いた!


目の前をルマリを連れた柚羽が歩いていた。


「こんばんは!」


愛那が挨拶すると、柚羽も嬉しそうに振り返る。


「こんばんは。」

「また会ったね。」

「ああ。。また会ったな。」


お互い、少し照れくさそうに話す。


「愛那は、いつも走ってるの?」

「うん。体動かすの好きだから。」

「そうなんだ。何かスポーツやってるの?」


愛那は少し考える。


「今は何も。でも小さい頃からイロイロやってたよ。テコンドーとか、体操とか。」

「テコンドー。すごいな!女の子なのに。」

「柚羽は?何かやってるの?」


柚羽と愛那は歩きながら話す。


「バレーやってる。」

「え!?バレー!?」


愛那の目が輝く。


「柚羽バレーやってるの!?」

「そうだけど・・・愛那、バレー好きなの?」


愛那はテンションがあがる。


「やった事ないけど、バレーをやりたくて日本に来たの!!ねね、日本代表選手会った事ある!?」

「会った事は無いけど、試合見に行った事ならあるけど。」


愛那は興奮する。


「すごい!!柚羽はどこでバレーやってるの?高校生?」


柚羽は、やや押され気味に答える。


「岡北高校。」

「岡北?あたしと一緒!何年生?」

「2年だけど。」

「そうなんだ!あたしは1年。バレー部に入るつもり!」

「そうなんだ。」


柚羽も嬉しそうな顔をする。


「教えてよ。バレー。」


瞳をキラキラ輝かせる愛那に、柚羽はドキドキする。


「いいけど・・・とりあえず、入部しろよ。それからだな。」

「うん!もちろん入部するから、そしたらイロイロ教えてね!あたしルールもよくわかんないから。」

「わかった。約束な。」

「うん。約束!」


愛那は小指を出す。


「何?」

「日本は、約束する時、こうするんでしょ?指切りげんまんって。」


柚羽は思わず吹き出す。


――今時ゆびきりって、こんな可愛い事言うヤツいるか?


「なんで笑うの?指切りげんまんって名前じゃなかった?」


柚羽は、笑顔で小指を出した。


「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます!指きった!絶対入ってこいよ。教えてやるから。」

「うん!」


愛那は手を振り別れた。


――可愛いすぎだろ!!あの顔で指切りとか!!絶対付き合いてえ!!


柚羽は愛那の姿を見送った。


――やったぁ!!バレーやってる人と仲良くなれた!!しっかり教えてもらって絶対、試合に出るんだ!!あのオレンジのコートに立つんだ!!


愛那もまた、柚羽とは違ったドキドキが止まらなかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る