向かう

俺は…どうすれば?


自分の家に一人、俺は怒っていた。

つけっぱなしのテレビから垂れ流されたニュース。に憎らしい名前と親愛な名前がならんだあれを思い出す。




「昨日、□□時□□分、□□□の□□□□で□□が起こりました。□□□□は柊蒼」




スマホを取り出す。

なんだか嫌な予感がした。

晩夏誠人。

今日、誠人は学校に来てなかった。

トークアプリを開いて通話ボタンを押す。

出ない。

出ない出ない出ない!


テレビに目をやる。

あ、あ?

なんでだ?

重体?なんでだ?

あいつ?あいつ、あいつ!!!

ふざけんなふざけんなふざけんな!!


あ゛ーくそ!あいつ、なんで、あの、くそカマ野郎!!!誠人と…心中?…なんで、誠人は…


なんで?あいつにそそのかされた?

なんでだよ!なんで?

誠人は、俺が絡み始めてからあいつに関与しなくなったはずだ!話もしてなかったし、隣に二人でいたこともなかった!だから、平気だと思ってた…俺が馬鹿だったのか?違う…違う!ちげえよ!俺は悪くない!あのくそカマ野郎のせいだ。一昨日だっけか?あいつ…俺のこと殴るし!痛ぇし!!!!!

ホンっっト許さねぇ。


まあでも、あいつはもう、干渉してこねェ。こっちに入ってこれねぇ。…死んだらそれで終わりだ。

死んだらなにもならねえ、ただの一般人が誰かの記憶になんて残んねェ。

だから、残念だったな。柊蒼空さんよォ。

ははは、あー、なんで、なんでこんな、からなんだろう。まあいい。

あの事件からは、きっと、まだ2日。


今から誠人に会いに行く。

まだ病院は空いているはずだ。

まあ、…何処の病院かは…察しがついている。


ふと、無意識にスマホを見ると、通話が繋がっていた。

恐る恐る、耳に近づけると、声がする。

男の声。…誠人の声じゃない、誰かわからない声。


『…もし?あれ?間違い電話かい?』

「……っ、もしもし?誠人の電話だろこれ…」

『あ、繋がった。…あー、君、椿つばきくん。久しぶりだねえ、元気にしてたかい?』



誰かわからない?何そんなこと考えてるんだ俺は。忘れちゃだめな人の声。

これは、あの人の声だ。

俺を助けてくれた、俺の命を救った医師の声。


「え、医師せんせい!?…なんで、誠人の、携帯に?」

『僕、誠人くんの主治医なのだよ。だからさ』

「そうなんですか」

『…今から来るのかい?僕が勤めている病院は変わっていないし、まだ面会の時間だよ』


よかった。

時間はある。

あいつに問いたださねえと。

なんで、あいつと自殺したか聞かねえと!


「今すぐ…行きます」

『そうかい、そう言うと思っていたよ。じゃあ、気をつけて来たまえ』



電話が切れた。


……今すぐ行くからな

待ってろよ。誠人。

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