ある一人の、客観的視点からお送りします

教室には四つ、花瓶が置かれた机。空席が一つ。あわせて、五つの、違和感がある場所がある。

一人はある事件で死んで、もう一人は後追い自殺、もう一人は学校で飛び降り。もう一人はわかんないけど、死んだ。で、残りの空席の一人は、俺の遊び友達、というか、形だけの友人の席。

ちょっと遊んでただけなのに、そんなで四人死ぬとは思ってなかったなあ。

ま、おれは主犯格じゃないし、先生には良い面してるし、疑われることはまず無い。

休んでるあいつが主犯格だから。俺は関係ない。知らね。

人脈なんて、この糞みたいな社会で生き残るための術ってもんで、心配もしない、なにも、思うことはない。

ただ、あいつがいないとちょっと気まずい奴がいたりする。はあ、早く帰ってこねえかなあ。嫌いだけど。


そういえばだけど、ずっと気づかなかったなあ、あの柊が男だったなんて。

普通に顔可愛いし、仕草とか、立ち振舞いとか、声とか、女にしか聴こえなかったし。身長低かったし、制服も女子だったし。

でも、だからっていじめを始めるとか、あいつも子供すぎねえ?

多様性の時代って奴だろ?多分。なのに。せっかく可愛いのに、傷つけたり犯そうとしたりさ、きめえなあ。やっぱ。

アイツを絶対的に許容できない。なんで、柊をいじめる理由があんだよ。俺、結構好きだったのに。…男だったけど?それでも可愛かったし?

ってな、きめえなあ、おれ。で、傍観を貫いていた誠人も…誠人だ。

柊が死んだからって後追い自殺するか?普通。

そういう風には見えなかった。

でも、柊と心中したらしいし。

恋人同士だったのか?って言われたら、そうかもしれねえし、違うかも知れない。恋人だったら、なんで、柊がいじめられているところを見てただけなのか、わからん。

誠人は掴めなさすぎる。

面白くて明るくてイケメンで、悪いところがないように見えて、ドジだし忘れっぽい。そう演じてんだろな、頭良いやつは、演技だって人一倍上手だろうから。

でも…後追い自殺…か。

才能潰しちゃ、意味ねえもんなあ。


それで?あとは、葵と花野か。

葵は、本当可哀想なやつだよ。

柊が死んで、そのせいでいじめられてた。元々クラスでも浮いてたしあまり人と話すのは得意じゃなさそうだった。だからこそってこともあるかもだけど、それだけでいじめられるもんか?普通、なんて思ってしまう。いじめに加担してるやつが言うのもなんか、違うな。

花野は、正直俺は好きじゃなかった。

学級委員と風紀委員はおれらの最大の敵だったからだ。その学級委員長。警戒はしてた。でも、ただの傍観者だったなあ。というか、いじめに加担してる人が少なかった。ほぼ、みんな見ているだけだった。それはただの恐れか、娯楽かわからんけど、いじめを止める人は、…いなかったなあ、なんでだ?

なんでこのクラスのやつら、誰も止めなかったんだろうか。

でも、あの時、花野が葵をかばったときは…委員長してたな。



「おい何ボーッとしてんだ帰んぞ~」


横に友達の一人が突っ立っていた。


「…ん?あぁ、おっけ、ちょっとまってな」


鞄に筆記用具と勉強道具を詰め込む。


「あ、勉強すんの?偉」

「だろー?」

「学生の本分は勉強だろ?当たり前だ」

「急に突き落とすじゃん、せっかく偉かったのに」


そいつは先に先に行く。

小走りでついていった。

ああ、そういえば。


あと一人、学校に来てないやつの話だが…あいつは、どこまで言ってもわからない、純粋な悪人だ。

だから、多分だれも、止められない。

止められなかったんだって思う。


「…そういえば最近、あいつ来ねえなあ…ツバキ、平気かなあ」


隣のが、そう言う。


「んー、大丈夫じゃねえの?ちょっと風邪引いただけだろ」


その返答から、おれらは他愛のない、下らない会話を始めた。

あの事も、全部なかったみたいに、おれらは笑い会っていた。

なんて残酷!なんて狂喜!それが人間。

まったく、怖いもんだな。

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