社会適合者

毎日毎日、生きるのが辛くて、ちょっとした怖いことでも、辛いことでも、心が傷んじゃう。学校が怖い。

うまく、社会に適合できないから。怖い。

無駄に長い髪の毛を、少しずつ少しずつ切って、なんとか場をおさめる。

髪を切ると、過去を切り捨てているような感覚になって、少し身体が軽くなって楽になる。


そして私は今日も適合する。

クラスではあまり目立たないけれど、一人になることはまずないし、話相手に困ることもない。

でもみんな、私の張り付けた笑顔しか知らなくて、本当の私を唯一知ってる彼は、虐めの新しいターゲットになっちゃって。

一週間と少し。あの二人が死んでからそれくらい。


私は我慢できなくなって、彼をかばった。


でも、でも怖くなっちゃって。

私も同じ事されるの?自殺したあの子と。

私も同じことをされるの?あの、目の前の彼と。


嫌だ、怖い、あれ?足が動かない。

目の前の人間が怪物に見えて怖い。

化け物に見えて怖い。


逃げなきゃ、足、動いて。



そう思ったらいつの間にか、保健室に駆け込んでいた。


辛い苦しい助けてどうかごめんなさいごめんなさい助けるにも中途半端でもっとひどいことされたら貴方はどう思うんだろうごめんねごめんなさいごめんなさい痛い辛い苦しい駄目だもう私は




…耐えられない。



そこから学校に行けなくなった。

もうなにも出来ない。





今、彼はどうなってるんだろう。

私には、分からない。


もっと虐められてたら、どうしよう。

私のせいだ。

でも、怖い。


行けない。


無理だ。私には。



なにも食べたくない

なにも飲みたくない


なにもしたくない。


息もしたくない。


とめて、苦しくて、また呼吸してを繰り返す。

頭がふわふわして、眠くなった。



のどがかわいたなあ






眠りからさめた



一時間しかねれなかった

ねないと、なにも出来なくなる。



ピンポーン




チャイムがなる。


おかあさんは仕事だ。でも私は動かない。…うごけない。動こうとするとぐらぐらして倒れそうになる。

口の中が不味い。



「…あれ、いないのかな」



そんな声がきこえた気がした。

あ、貴方の、声が


…きこえる。


「ポストに手紙、いれとくよー。…それじゃ」


彼はそういったあと、かえっていった。


てがみ、とりにいかないと、

でも、うごけない。


おかあさんにたのめばいっか。


もう寝よう、おやすみなさい。


あ、おなかすいたなあ。

のどかわいた。でも。


ねむいから。

しょうがないや。








その後、少女が目を覚ますことは無かったそうだ。



死因 栄養失調、脱水による餓死。

なにも飲まず食わずは、人間の身体に良くないです。

それに、あなた方は食べ物や飲み物に困ることはそうそうないでしょう?自分が恵まれていることを覚えておいてくださいね。

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