1970年 そして彼らは神話となった

 1970年、日本シリーズは甲子園と東京球場で行われることとなり、黒い霧でプロ野球全体の人気が落ちる中、輝きを放ち続けた2球団の対決となった。


 史上最強の打線と絶望を与えるピッチャーを揃えた京都ゲームズ。


 不調ながら経験値で競り勝った東京ナインズ。


 第1戦は東京球場で行われた。


 先発は京都ゲームズは負けないエース、園城寺。


 対するは昨年から続くV5の立役者、郡道。


 V6達成のために郡道が先発のマウンドに立つ。


 しかし待っていたのは絶望であった。


 初回から京都ゲームズの打線が1巡する猛攻で一挙に7点を奪い、昨年の雪辱を晴らすと、園城寺が大玉に2発被弾するも完投し、東京ナインズは初戦から投手を5人も投入する炎上劇で終焉。


 12対2で京都ゲームズが勝利した。


 気持ちを切り替え第二戦。


 この日先制したのは東京軍団の方で、不調だった長尾と主砲の大玉がチームを引っ張り、1番バッターの町田や6番の宮城も食らいつき、7回までで宮永から6点を奪う。


 しかし黙ってないのが将軍打線。


 8回に酒井が出塁するとシュトロハイムが2塁打、大星がヒット、井伊がレフトスタンドにぶちこみ一挙4点を奪取、そのまま1アウト満塁で1番赤羽。


 センターへキレイに弾き返して1点を奪取し、そのまま2塁の松平もホームへ突入する。


 しかし、今年も町田が立ちふさがる。


 レーザービームで松平をホームでアウトにし、酒井が打ち損じて8回の攻撃が終了。


 9回シュトロハイムがフェンス直撃コースのライナーの打球を町田がシュトロハイムの打球は伸びるからと深めに守っていた事が功を奏して、フェンスをよじ登ってキャッチ。


 流れを断ち切り、第二戦は東京ナインズがものにする。


 第三戦はシュナイダーが登板。


 1回にシュトロハイムのホームランが飛び出すが、それ以降は緊迫した試合が続き、勝利投手の権利を持ってシュナイダーが5回で降板。


 6回からは便利屋の東宮、ワンポイントの多田、普段は火消しをしている笹木を1回で3人投入するマシンガン継投を行い、無失点で切り抜けると、必勝の継投策である堀田を投入。


 堀田は四凡で切り抜け、惣流院を8回に投入。


 この頃には七色の変化球と言われるくらい変化球ピッチャーになっていた惣流院は2者連続三振で切り抜け、9回の男鈴原に託す。


 迎えるはクリーンナップの長尾、大玉、市原。


 トミー・ジョン手術から選手生命を復活させた男は全球ストレートでねじ伏せる。


 最速157キロを叩き出し、弾丸の様な回転で伸びてくる球をこの時はレジェンド達も打てなかった。


 鈴原の9球。


 3者連続三振という最高の形で逃げ切り、1対0で勝利し、2勝1敗。


 続く第四戦。


 登板したのは西園寺で、粘りの投球で8回2失点。


 打線はシュトロハイムが4番に回り、3番井伊、5番大星の打順に切り替わり、シュトロハイムが2打席連続グランドスラムで8点を奪取。


 最終回にマウンドに立つのは鈴原。


 気迫の投球でこの日も3者連続三振を奪い、試合を決めた。


 日本一に大手をかけた第五戦。


 マウンドを任されたのは水野であった。


 日本一を阻むのはまたしても町田であった。


 先頭打者ホームランから始まり、4打数4安打の大活躍、長尾の適時打と大玉のホームランで5点を奪う。


 シュトロハイム達将軍打線のメンバーも負けてない。


 赤羽が出塁し、盗塁を行い、酒井がヒットエンドランに成功させると、大星とシュトロハイムがアベックホームランを放って6回に4点を奪う。


 しかし8回に大玉がまたしてもホームランを放ち、4対6と突き放し、次戦に持ち越しかと思った時、怪我で今シーズンの大半を休んでいた三好が同点2ランホームランを放つ。


 そして松平が出塁し、盗塁を決め、恐怖の8番糸口が2塁打を放って一気に逆転。


 そして最終回にマウンドに上がったのは9回の男···鈴原。


 更に球速を上げ、158キロの直球と1メートル以上曲がるスライダーで誰にもバットに球を掠らせずに3者連続三振。


 初代球界で初めて守護神という役割が与えられた男鈴原は伝説になった。








 マウンドにシュトロハイムが駆け寄り、鈴原を肩車する! 


『お前が今日は日本一の男だ!!』


 と叫び、鈴原は拳を掲げて人差し指を立てた。


『俺がナンバー1だ!!』


 掲げられた右腕にはトミー・ジョン手術で縫い合わされた傷跡がはっきりしており、鈴原の苦労がよく分かる。


 京都ゲームズのメンバーは誰かから始まったか万歳が始まり、甲子園に紙吹雪が舞った。


 京都ゲームズはこの日伝説となったのだった。








 1970年、日本シリーズMVP 鈴原

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