1969年 シーズン成績 シュトロハイムの土地転がし 開業コインランドリー

 日本シリーズを終え、リーグ優勝祝賀会と行きたかったが、殆どの選手がインフルエンザによりダウンし、秋季キャンプも今年は開催しない事が通達され、しっかり療養することが求められた。


 一方で感染しなかったシュトロハイムは京都各地で優勝記念行事に呼ばれて講演会に連日呼ばれていた。


 そんなシュトロハイムだったが、夜には新しく球団社長となる、ジオ社のスポーツ部門から出向してきた京都府民の五条新球団社長と連日話し合いを行った。


 まず一番最初に話題が上がったのは新球場建設である。


 船岡山球場が老朽化で限界を迎え、外野席の一部が崩れたのは記憶に新しく、船岡山球場を改装工事をするか、それとも別の球場を建設するかで意見を求められた。


『新しく建築する方が多分安上がりでしょう。船岡山球場は鉄道の利便性が悪く、京都タクシーのバスとタクシーの輸送によって観客の輸送が行われてきましたが、撤退した以上、拡張性の低い船岡山よりは嵐山なんかどうでしょうか。郊外で土地が比較的安く、嵐山温泉が近くにあるので鉄道も通っていますし』


「なるほど、確かにあの一帯はまだ値段が安く開発が進んでない地域だな」


 シュトロハイムは嵐山駅から西の山や空き地に目をつけていた。


 寺巡りで法輪寺とせっかくだから温泉でゆっくりしようと嵐山をを訪れた際にここの山を切り開けばいい感じの土地になりそうだなぁと思っていた。


「新球場を作るとなると自前で球場を持つことになるのか···球場を他の会社に作ってもらって、借りたほうが安く済みそうだが」


『あ、それ奴隷契約になるので絶対にやめてください』


 別に新球場をドームにしてほしいというわけではない。


 ナイター施設と(現代でも通用する)プロ野球の球場ができれば文句はない。


『せっかく京都の色々な会社と提携しているのですから、そのお店が球場近くや球場内で飲食ができる場所ができれば良いですよね!』


 とシュトロハイムが提案し、ベイスボールパークの構想を説明すると、五条社長はワナワナと震えだし


「それだー!!」


 と叫んだ。


 五条社長は行政や各株を保有する会社と相談したが、野球による地域経済の活性化は京都タクシーズの優勝効果が凄まじく、直ぐに新球場建設の許可が降り、メジャーに飛んで各地のボールパークを視察し、シュトロハイムが未来のボールパークの設計も参考にしながら嵐山新球場の開発が始まるのだった。





 今年のタイトルが発表され、京都タクシーズの選手のシーズン成績も新聞に載っていた。


 今年多かった打順で紹介していこう。


 1番セカンド 赤羽 規定打席 最優秀二塁手(盗塁2位)

 打率.332、5本塁打、32打点、48盗塁 


 2番センター 松平

 打率.273、1本塁打、12打点、15盗塁


 併用センター及びライト 酒井

 打率.299、5本塁打、22打点、28盗塁


 3番ファースト 井伊 規定打席 新人王(打率4位)

 打率.341、35本塁打、89打点、2盗塁


 4番ショート シュトロハイム 規定打席 首位打者 本塁打王 打点王 盗塁王 最優秀遊撃手 MVP

 打率.660、78本塁打、255打点、105盗塁(630打席289安打、出塁率.730、ops2.193)


 5番レフト 大星 規定打席

 打率.310、29本塁打、80打点、25盗塁


 6番キャッチャー 安田

 打率.278、25本塁打、79打点、盗塁阻止率.342


 併用キャッチャー 三好

 打率.299、5本塁打、42打点、3盗塁、盗塁阻止率.399


 7番サード 染岡

 打率.278、1本、35打点、15盗塁


 8番ライト 増田

 打率.258、4本、20打点、20盗塁


 投手は4本柱とHSSを紹介。


 宮永 最多勝

 防御率2.59、25勝2敗、220奪三振


 西園寺 

 防御率2.38、22勝6敗、72奪三振


 園城寺 最多奪三振

 防御率2.21、20勝4敗、272奪三振


 水野

 防御率2.45、23勝5敗、192奪三振


 堀田

 50登板、防御率1.56、59奪三振、(参考記録)32HP(ホールドポイント)


 惣流院

 62登板、防御率0.92.65奪三振、(参考記録)48HP、(参考記録)4セーブ


 鈴原

 46登板、防御率0.77、95奪三振、(参考記録)40セーブ


 と輝かしい成績を残した。


 しかもチーム平均年齢が23歳という若さである。


 まだ選手層は厚い訳では無いが、レギュラー陣は他チームに引けを取らない選手達であり、2軍にいる選手でも良さそうな選手が育ってきていた。


 しかし、やはり目を疑いたくなるのはシュトロハイムの成績である。


 打率.660と夏場以降は更に打率と出塁率を伸ばし、21打席連続安打、32打席連続出塁と言う異次元の成績を残す。


 シュトロハイム攻略の為にあの手この手で封じ込めようとしたが、逆に癖を看破されたり、捕手のリードから逆算し、更には一部の他球団が積極的に行っているサイン盗みをキャッチャーや一塁選手にそっと呟いて相手チームの動揺を誘うという報復を行った結果がこの異常な打率と出塁率である。


 流石にこの年がキャリアハイの出塁率となる···出塁率はだ。


 255打点や78本塁打はこの時誰もが超えることができない本塁打数だと思ったが、シュトロハイムは更にチーム全体の強化を行った結果、複数年に渡り300打点を達成することになるのだが、そんな恐怖を他のチームは知る由もなかった。







 ドラフト会議数日前、シュトロハイムの元に国土交通省の役人が訪ねてきていた。


 数年前、捨て値で買った山を相場の4倍の価格で買い取りたいと打診があったのだ。


 相場の10分の1の価格で山を買い、それが4倍になったので凄まじい土地転がしである。


 元々は別荘とかオフシーズンの野球練習場にする予定だったのだが、新しい空港を作りたいから兵庫の土地が欲しいと言ってきたのだ。


 シュトロハイムは勿論承諾し、税金を引かれても1億円近くの臨時収入が転がり込んできた。(当時の物価計算だと約4億5000万ほど)


 シュトロハイムは大喜び、その金で支援してくれている会社や儲かりそうな株を次々に買っていった。


 それでも5000万円近くの金が残った為に、シュトロハイムはアルベールに大型洗濯機とコイン式洗濯機を日本に導入できないか頼んだ。


 シュトロハイムの話を聞いたアルベールは金になるとシュトロハイムと共同出資でコインランドリー店を東京と京都にオープンさせた。


 海外ではコインランドリーがあった為に、日本用に少し改造し、洗濯機よりも乾燥機の割合を多くしたり、靴の丸洗い、乾燥もできる機械をアルベールの知り合いの会社に開発してもらい、京都、大阪、東京にオープンする運びになり、新聞等にシュトロハイムは洗い物からの解放とか野球で汚れたユニホームもご覧の通りといった新聞広告を掲載すると、京都支店ではオープン初日から大行列が起こり、住宅用洗濯機では洗えない毛布が洗われて、乾燥される様子を見て京都の住民の心を掴んだ。


 シュトロハイムの宣伝効果もあり、コインランドリーの収入も入ってくるようになるのだった。

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