第5章 雲隠れ

「天に昇ったのか 

   地に落ちたのか――」


   あの日と同じ月の下

    あの日と同じこの姿で

     亡き大王の魂を思った


       殯宮あらきのみやには消えぬ火が

        ひっそりと生きる命のように

         赤くはかなく燃えていた



   「残されたのは、わたしだけか……」

   厚く広がった雲に、月も星もとっくに隠されて見えなくなっていた。

   目に映るものはひとつだけ。闇夜に揺れるかがり火を、わたしは遠くから眺めていた。いつまでも。

   あれは命亡くなった者を悼む灯。でも本当にそうだろうか?彼は本当に死んだのか?

   わたしは、いつかの十六夜いざよいの夜、打ち明けられた秘密を思い出していた。この世でたった一人、わたしだけが知る秘密を。

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