女性が友人を訪ねた海外旅行で恐ろしい現実を体験する話
レビューする時に他からのカンニングはよくないかもだけど「真に書きたいことを書きたい!」と思った時にだいたい人は周りが見えずに不器用になる。私もそうです。だけど読んでほしい人達に刺さる仕掛けをしている。
まずタイトルの「私の旅行記」が手にとるハードルを下げている。一見楽しそうな作品に見える。
銃声の表現が特に良い。ここ筆致を振り回して書きたくなると思う。だけどこのシーンは描写し過ぎると最初の仕掛けにかかって読んでくれてる人はしんどくなる。なのにリアリティも必要。無機質なカタカナの文字列が"何が起きたかわからない感覚" "無感情な銃口"を感じさせてエグみなく静かに怖さを感じる。
「~私は年をとっていた」もいいですね。一回目と二回目の重みの違い。でも同じ表現を使うことで同列に感じさせてるようにも思える。この話を解釈するにはこの「違うけど、同じ」という「反対の感覚」両方が必要で色々な気持ちが湧く味わい深い表現になってます。
自分のやりたいこと、読者、両方見えていて抜群にコントロールできてますね。書く量、期間、質、そしてなにより楽しそう。筆が踊ってきてますね。読んでて悔しく、羨ましくなりました。