第16話「思いっきり魔法を使いたくて……」
私たちは今、魔法練習場に来ています。というのもレヴィ様から、明日フェイバリット家に帰る前に何かやりたいことがあれば言ってください、と言われまして。ならばと魔法の練習をお願いしました。
ホワイトレイ辺境領に来た日以来、ずっとできていなかった魔法の練習がやっとできる……! さて、どんな魔法を使いましょうか?
大きい魔法を使いたい気もしますが、魔法練習場とはいえその周囲まで影響が出そうですね。同時に防壁魔法を使うこともできますが、他のことに気を使わず、思いっきり魔法を撃ちたい気分です……。
「……私にできることであれば協力するのでいつでも言ってくださいね」
……そうです! その言葉に甘えてレヴィ様に防壁魔法をお願いしましょう!
「レヴィ様……!」
「何ですか?」
「この魔法練習場一帯に防壁魔法をお願いしてもよろしいですか? 思いっきり魔法を使いたくて……」
「もちろんですよ。……〈
練習場の端から半透明の壁ができていきます。それはあっという間にこの周囲を包み、半円状の建物のようになりました。
さすがレヴィ様……! 展開の速度も防壁の固さも完璧です! この国随一といわれる魔力をそこまで正確に操れるなんて、どれだけ練習したのでしょう。きっと私の見えていないところでも努力をしていたのでしょうね。本当に、尊敬します。
「はい、できました。この中であればどんな魔法を使っても大丈夫ですよ。さあ、遠慮なくどうぞ」
「ありがとうございます!」
ここまでしていただいたのです。遠慮なく大きな魔法を使いましょう。……竜魔法を使ってみるのも良いかもしれませんね。
何はともあれ、まずは私が一番得意な風魔法です! ぎりぎり暴発させない程度の魔力を練って……。
「〈
天に昇る竜のような風の渦巻き、周囲のものを巻き込み進んでいきます。レヴィ様の防壁魔法はびくともしません。……そろそろ良いですかね。
私は風竜の勢いを弱めていきます。
風竜などの大きな魔法の場合、勢いを弱めずに魔力を絶ってもその現象はすぐに消えません。もしもそうしてしまった場合、制御不可能になり、下手をすると町一つくらいは消えてしまいます。そうならないようにするために、魔力を持つ者は魔法を学ぶのです。
……無事に消えましたね。無意識に止めていた息を吐き出します。大きな魔法を使う時は完全に消えるまで気を抜いてはいけませんから。
「……お見事です。魔法の威力、質ともに完璧で、最後の最後まで注意を払えている、素晴らしいですね。それにしても竜魔法ですか……。なかなか難しいものを選びましたね」
そう、「竜」をその名に冠する魔法は、その属性の中で一二を争うくらいに威力が強い魔法です。その分扱いも難しく、魔法に慣れていない者が使うと莫大な魔力を制御しきれなくなってしまいます。
「レヴィ様がここまでの防壁魔法を作ってくださったので、私もそれなりのものを使いたいと思いまして……」
「ふふ、そうですか。では次はどんな魔法を見せてくれるのでしょう?」
次、次は……、少し苦手ですが、光魔法を使ってみましょうか。
今まで光魔法は完璧に制御できたことがないので、さっきよりも控えめに魔力を練ります。
「〈
きらきらした光の粒が空から降ってくる魔法、……に先ほど壊してしまった練習場を修復するというものを組み込んだ魔法です。
光の粒が触れたところから練習場は直っていきます。
光雨の魔法は見た目がとにかく美しくて「光の慈雨」なんて呼ばれることもあるそうです。全てを癒すなんて効果はないはずですがね。
……さて、そろそろ止めますか。
…………あれ、止まりませんよ? 魔力は絶っているのに、ど、どうしてでしょう?
光の粒が地面に触れると、なぜか植物が育っていきます。……え? そんな効果はないはずですよ? そう、ですよ……ね?
「ロティ、落ち着いて! 今一度魔力を絶っているか確認してみてください!」
魔力を絶っているか確認……、僅かに繋がっているところがありました。即座に絶つと、光雨は止まります。
……よ、よかったです。
「れ、レヴィ様、ありがとうございます……」
「いえ。……ロティ、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。すみません、初歩的なミスでした……」
「人間ですから、そのような時もありますよ。今後に活かしていきましょう。ひとまず、ロティが大丈夫なようでよかったです」
レヴィ様は私を安心させるように笑って言いました。そうですね、今後このようなミスをしないように気をつけます。
この後、気が済むまで魔法を使ってからホワイトレイ家へと戻りました。……使ったのは光魔法以外ですが。
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