第13話「……きと、……好きと言おうとしていました!」
……わ、私は今何を言おうとしたのですか!?
魔法に熱心なレヴィ様も好き……。ち、違います! これは、……違うはずです! そういう意味ではない、はずです!
「ロティ?」
「ひゃい!」
……噛みました。ひゃいってなんでしょう。焦り過ぎです、私。ほら、レヴィ様も笑っているではないですか。……恥ずかしいです。
「……わ、笑わないでくださいっ!」
「ふ、す、すみません……ふふっ。ロティがあまりにも可愛いのでつい」
か、可愛いですか!?
頬がさらに赤くなってしまったではありませんか……! レヴィ様の顔が見れません……!
「それでロティ。魔法に熱心な私もす……、ですか?」
どうやら聞かなかったことにはしてもらえないようです。なんと答えたら良いのでしょう?
そ、それになぜだか、レヴィ様が近づいてくる気配がしますよ……?
「ロティ?」
い、息が……、み、耳元で話さないでくださいっ! す……、す——。
「素晴らしいと、言おうとしました! そこまで集中するほど魔法に熱心になれるレヴィ様は素晴らしいと思いますっ!」
「そうですか、それはありがとうございます。ところで、本当は何を言おうとしたのですか……?」
……分かって、いますよね? これは完全に分かっている言い方です。そして耳元で話さないでください。恥ずかしいです。
逃しては……、もらえないみたいですね、ええ。もう、こうなってしまったのなら腹を括りましょう。さあ、勇気を出して言うのです、私。
「……きと、……好きと言おうとしていました!」
い、言ってしまいました。……恥ずかし過ぎます。恥ずかし過ぎて泣けてしまいます。
「……ロティ、こちらを向いてくださいませんか?」
……もうどうにでもなってください!
そう思いながら寝返りを打ってレヴィ様の方を向きます。思ったよりもずっと近くにいたレヴィ様は幸せそうに嬉しそうに微笑んでいました。
「私も好きですよ。大好きです。愛しています。……例えそれが家族に向けるようなものでも、とても嬉しいです」
……家族に向けるようなもの、ですか。きっとそうです、そのはずです。……が、この違和感は何でしょう?
「ロティ……?」
レヴィ様は心配そうに言いました。
……思い返してみれば、レヴィ様と兄妹として暮らしていた頃には「好き」と伝えることがこんなにも勇気のいるものではありませんでした。それが家族に向ける「好き」だったのは確かです。
では先ほど、どうしてあんなにも勇気が必要だったのでしょうか?
「何か、気になることでもあるのですか? もしもあったらぜひ話してください」
……レヴィ様ならその理由が分かりますかね? 自分一人で考えても一向に分からない気がしますので聞いてみましょう。……少し恥ずかしい気はしますが。
「……ありがとうございます。レヴィ様の考えを聞きたいのですが、家族に向ける『好き』とそれ以外の……恋愛的な意味での『好き』はどう違うのですか?」
レヴィ様は一瞬呆気に取られたような表情をした後、柔らかい声で話し始めました。
「そうですね……。ひとまず、私が思う恋愛的な『好き』というものについてお話ししますね」
「お、お願いします」
なんだか緊張しますね。どんなものなのでしょう?
「まず、好きな人とおそろいにしたくなる、というものでしょうか。相手に自分の髪や瞳の色が入ったドレスやアクセサリーを贈りたくなったり、相手の癖や口調を真似したくなったりと。私の場合、ロティの色を身に付けたくて深緑色の髪紐をつけていますよ」
この色というのは私の瞳の色のことですね。
なるほど、おそろいですか……。レヴィ様とおそろいのもの、何かありますかね?
……あ、これはそうです。私が誰に対しても敬語であること。レヴィ様の真似をしたのでした。レヴィ様とおそろい、確かに嬉しいものですね。
「次に、好きな人のことを考えると胸があたたかくなりますね。ロティのことを考えているときはぽかぽかした幸せな気持ちになります」
思い返してみれば、レヴィ様のことを考えるときはいつもあたたかな気持ちになっていました。今もそうです。
「そして、好きな人に嫌われるのが怖くなります。ロティに嫌われてしまったら生きていけないと思います」
レヴィ様は至って真面目に言いました。
その気持ち、すごく分かります。レヴィ様に嫌われたら……なんて考えたくもないです。
「さらには、……他の人に取られたくなくなりますね。ロティが他の男と話していると、とてももやもやします。ちなみにセオドアでも兄上でも、です。いわゆる嫉妬というものですね」
セオドア兄様とリアム義兄様も、ですか。レヴィ様でも嫉妬をするのですね。なんだか安心してしまいました。レヴィ様は余程のことがない限り笑顔でいますから。
ふと、レヴィ様と他の女性が話している姿を想像してみました。……何でしょう。もやもやします。想像しなければよかったと思うほどに。
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