第11話「レヴィ様! 助けてください!」
レヴィ様がここ数日何をしているか、ですか……。
「いえ、知りません」
むしろそれは私も知りたいことです。レヴィ様本人には会っていませんし、他の方に聞こうにもはぐらかされてしまいますから。
「そうか、そうだよなぁ……」
「リアム義兄様は何かご存じですか? どなたに聞いてもはぐらかされてしまって……」
「あー、実はな、シャーロットが起きた日、ちょっと出てくると言って以来帰ってきてないんだ。定期的に魔法で連絡してくるが、それも『生きてますよ』みたいな内容だけで、どこにいるのかも分からなくてな……」
「それは心配ですね……」
なるほど、それで私に何か連絡が来ていないのか念の為確認に来たのですね。はぐらかされていたのは大方私に心配をかけさせないようにするため、でしょうか?
レヴィ様がいそうな場所……、なんとなく心当たりがありますが。確かあれは……。
「……そうです」
「シャーロット? どうした?」
「レヴィ様の居場所が分かったかもしれません」
「本当か?」
「あくまで可能性ですがね。という訳でリアム義兄様、私の共犯になってください」
「——父上にバレたら大変なことになるぞ……」
「まあまあ、これもレヴィ様を見つけるためですから」
おそらくもうバレている頃だとは思いますが。
私たちは今、ホワイトレイ辺境領に接する森に来ています。そう、魔物がいるあの森です。
一人で来ることもできたのですが、お父様との約束を破ってしまうことになるのでリアム義兄様に付いてきてもらいました。約束を破ってしまったらしばらくは外に出してもらえなくなりそうでしたので。
私たちが向かっているのは、以前レヴィ様が教えてくださった秘密の場所です。森の中にぽかりと空いた木々の生えていないところ……、そろそろ見えてくるはずなのですが。
「もうそろそろか?」
「そのはずですが……」
リアム義兄様は突然足を止め、何かを考えるそぶりを見せました。
「……レヴィのことだからな、隠蔽する魔法でもかけてるんじゃないか?」
「……! そうかもしれませんね」
そうだとしても、私の魔法では破れないでしょう。何しろ相手はイミルド王国随一の魔術師ですから。
となると、あの手しかない、ですよね。できれば使いたくなかったのですが……。
「今から隠蔽魔法を破ります。通常とは違うやり方をするので、念の為離れていてください」
「わ、分かった」
リアム義兄様が離れたことを確認しました。……さて、やりますかね。お願いしますから出てきてくださいよ、レヴィ様。
「……レヴィ様! 助けてください! この魔物、私一人では対処できません!」
私の声が森に響きます。魔物に襲われているのを想定して叫びました。……こんな大声出したことがないのですが、背に腹は変えられませんよね。ええそうです。その通りです。さあ出てきてください。
「ロティ!? 大丈夫ですか!?」
「つ、捕まえましたよ」
予想通りどこからか姿を現したレヴィ様をしっかりと掴みました。私の顔が熱くなっているのは気のせいです。絶対に気のせいです。
驚いた顔でリアム義兄様が近づいてきました。
「……シャーロット、なかなかやるなぁ」
「兄上? これは一体どういうことですか?」
「レヴィが帰ってこないのを心配してシャーロットと一緒に探しにきたんだよ。場所はこの辺りだと分かったが、誰かさんが隠蔽魔法かけてただろ? だからそれをシャーロットがなんとかしたってこと」
「う……すみません。それは分かりましたが、どうしてロティは助けてと叫んだのですか……?」
「……レヴィ様を隠蔽魔法の中から引っ張り出すためですよ。これを自分で言うのもなんですが、私が助けてと叫んだら来てくださるのでは、と思いまして……」
なんてことを言わせるのですか……!? これだと私がレヴィ様に愛されていることを分かっているみたいではないですか……!?
実際分かってはいましたが……。兄妹だったときも、今も、見える形は違えどそうだとは思いますから。
……なんだか恥ずかしいです。
「……ふふ。その通りです。よく分かりましたね」
「…………帰りましょう、レヴィ様、リアム義兄様」
すたすたと歩き出すと、後ろからお二人がついてくる気配がします。
「ロティ、待ってくださいよ。ふふっ」
「待ちません」
私に大声を出させたせめてもの仕返しですから。というかどうして笑っているのですか? ……まあ、無事に帰ってきてくださったので良しとしますかね。
屋敷に帰ってからお義父様とお義母様に3人で怒られたのは当然のことでしょう。
私はお医者様から言われた通り安静にせず、屋敷の者に言わずに外出したから。
リアム義兄様はそんな私を止めないどころか一緒になって行動したから。
レヴィ様は屋敷の皆さんに心配をかけ、私が探しに行くまでのことになったから。
一通り怒られた後、何はともあれ3人とも無事でよかったと言葉をかけられ、これからは軽率に心配をかけるようなことはしない、そう誓った私たちでした。
軽率にしないだけであって、絶対にしないとは言いませんでしたがね。
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